8/5

 夜、痒くて目覚める。じっとしていると虫がもぞもぞと動くのがわかる。気が狂いそうに痒い。腹から背中にかけて信じられないほど虫さされの痕がある。50個くらい数えたがキリがないのでやめた。
 キンカンを塗りまくってなんとか寝直す。

 痒さと戦いながらなんとか進む。しばらくするとカラカラに晴れ上がってきたので、これ幸いと寝袋と服を乾かす。ちょうどいい感じの巨大な岩があったので、そこに寝袋をべったりと広げ、2時間くらいかけてじっくり日干しにしてやる。

 

8/6

 なにもない田舎道に、時々ものすごいセクシーねーちゃんが立っている。中には下着姿の人もいる。売春婦らしいが、あたりには村も集落もない。ヒッチして街まで行くということなのだろうか。
 相当ヒマらしく、たまに話しかけてくる人がいる。「1000フォリントよー」(600円)とか言ってるが、こんな原っぱの真ん中でどうしようというのだ。たまに飲み物やビスケットをくれるねーちゃんもいたりする。

 しかし、どうやってこんな辺鄙なところまできたんだろうか。
・朝、ヒモに送ってもらう。
・客を捕まえヒッチして街に。
・またもとの位置まで送ってもらう。
・夜、ヒモが迎えに来る。
 こんな感じだろうか。

 手間がかかってるわりには1000フォリントとは安い気がする。ハンガリーの物価は、安い食堂で一食250フォリント、缶詰100フォリント、映画400フォリントくらい。

 ブダベストに着き、日本人が集まるという安宿テレサハウスを探す。
 しかしどうにも見つからない。手元にあるのは手書きの貧相な地図だけ。日本食レストランがあったので、そこで聞いてみるがわからないという。けっこう金持ち向けらしい店だったので、安宿の事なんてしらないらしい。
 駅のツーリストインフォメーションで聞いてみてもわからないという。どうしようかと迷っていると、地球の歩き方を持っている日本人の女の子2人組を発見。たしかテレサハウスは地球の歩き方に紹介されていたので、見せてもらう。
 住所をもとにテレサハウスに行ってみると、実は何度も通った道沿いにあった。看板が出ていないのでわからなかった。
 宿というより、アパートの自分の部屋を雑魚寝用ように貸し出しているという感じだった。

 なんとか辿り着いたものの、現在満室だという。なんとかならないかと頼み込むと、部屋の前の廊下ならいいという。
 この建物はロの字型をしていて、それぞれの階はカギかっこ型の4つのエリアにわかれている。入り口には鍵付きの門があるので、廊下でも安心して寝られる。鉄パイプフレームにナイロンテープを張った簡易ベッドがあり、そこで寝泊まりすることになった。300フォリント(180円)安い。安すぎる。

 

8/7〜9/4

 驚くべき事に、ブダペストでは一ヶ月も滞在してしまった。
 紛れもない沈没野郎だ。ほんの2週間前にイスタンブールで沈没したばかりだというのに。
 この見事な沈没の理由として
・宿が安い
・めしが安い
・愉快なツーリストばかりで楽しい
 などが挙げられる。
 宿は、次の日に部屋のほうが空いたが、廊下の寝心地が非常に良かったので「ずっとここがいい!」と入り浸ってしまった。部屋のほうで騒いでいても音がほとんど洩れてこなくて夜は寝やすいし、一つしかないバス・トイレの入り口が見えるので、待つのが楽という利点もある。
 悪い点としては、門を開けて入ってきた人が一番最初に見る場所なので、かなり変人だと思われてしまう。でもほんとに変人だから仕方ない。
 めしが安いのも魅力だった。毎日通った行きつけのスパゲッティ屋があったのだが、250フォリント(150円)で2食分くらいは食わせてもらった。最初は人並みの量だったが、だんだんと僕が大食いだとわかったらしく、他の人と一緒に行っても僕の皿だけあきらかに1.5倍くらい量が多かった。

 毎日通っためし屋のみなさん。

 

 宿にはもう2週間くらい滞在しているイトウさんという人がいて、彼の話によるとチカねえもこっちに向かっているという。僕が到着して数日でチカねえと山口さんがやってくる。こういう再会は嬉しいものだ。

 なかなかアクの強い面々がそろっていて、時々けんかが起こりそうになることもあった。僕は八歩美人でだれともそこそこ仲が良かったから、いつの間にか調停役になってしまった。そうなるとますます偽善者を装わなければならなくなり、なんとも微妙な立場になってしまった。本当はものすごく腹黒いのに「落ち着いたいい人」と思われるのは調子が悪い。
 イトウさん、女王、太郎(名前を知らないからみんな仮名で呼んでいた)あたりがいつも問題の中心となっていた。まぁ、みんなそれぞれおもしろいことはおもしろいんだけど。
 女の子もカワイイ娘がけっこういて、非常に楽しい宿だった。

 何日かするとチカねえがふたたび登場。しかし、服や荷物がいままでと違っている。なんでも、電車で高いびきかいて寝ているすきに荷物を全部盗まれたそうだ。
 さすがのチカねえも途方にくれたらしいが、ルーマニアで修道院かなにかに行き、ボランティアかなにかを手伝いながら2週間ほど過ごしたところ、そこでできた現地人の友達が服などをくれて、また旅行道具が揃ったという。しかもルーマニアではもりもりめしを食いまくったらしく、あきらかに丸っこくなっていた(チカねえの名誉のためつけくわえておくと、もともと痩せているタイプだったのでデブになったというわけではない)それにしても転んでもただでは起きない図太さに感心。見かけはトボけていているのにあなどれない。

 宿のみんな。僕の隣にいるのは当時宿の中で一番人気の娘だった。童顔巨乳という殺人技を炸裂させていた。

 

 

 ハンガリーではワインが安く、瓶一本100円程度で買える。日本のものとは違い甘くて飲みやすい。イトウさんが酒好きなので、付き合って毎晩一本飲んでいた。こんなにたくさんの酒を飲むのは、おそらくこれっきりだろう。

 花火大会、オーケストラ、映画、遊園地、ゲームセンターと、ハンガリーではリッチに過ごしてみた。この国は売っているものは西欧レベルなのに、物価が東欧のままなので、旅行者にとっては天国だ。

 遊園地の入り口。

 ゴーカートグランプリ。めちゃめちゃドリフトする。安全基準が日本よりも緩いのか、スピードもパワーもかなりすごい。
 ジェットコースターなども安全ベルトなどついていない。しかも木製で、ギシギシと軋む。

 すごそうな建物と地味な路地。

 

9/5

 宿を出る。ポルトガルのロカ岬まで推定2ヶ月。西欧に入ったら宿なんてとても泊まれなくなるから、今後二ヶ月間休み無しだ。
 久しぶりの自転車だから、ハンドルが振れて走りにくい。自分はこんなに重い自転車をこいでいたのかと思うと少しびっくりだ。
 ブダペストを出るとまた田舎町が続く。
 道路脇にはあいかわらず売春婦のねーちゃんたちが立っている。3人くらいでつったってるねーちゃんたちが話しかけてきたので少し相手をする。一人がものすごい巨乳だったので、「ねーちゃんの乳すげーなぁ、おい」と言ったら、ちょっとさわらせてくれた。これはラッキーだ。そしておかしをわけてくれた。

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