「う……く……」

 その時、死体の山の中で何かが動いた。

「ひゃっ!」

 ブリイズは驚き、声のほうを振り返った。猫人の兵士が隠れているのではないようだった。ブリイズはおそるおそるそちらへ歩み寄った。

「う……あぅ……」

「だ、誰なの?」

 

「ぶり……り……ん……」

 四肢を切断され、生皮を剥ぎ取られ、目玉をくりぬかれ、歯を叩き折られ、髪を引き抜かれたその物体に、ブリイズはかすかに見覚えがあった。

「セ、セモリナさん……セモリナさんなの!?」

「ぶり……り……ん…………さ……む……い……」

「セモリナさん、しっかりして!」

「……ぶり……さ……む……」

 セモリナはそれきり動かなくなった。

「セモリナさん! 起きて! 起きてよ! 僕をひとりにしないで!」

 ブリイズはセモリナの体を揺するが、セモリナはすでにただの肉塊になっていた。

「やだよ! 死んじゃだめだよ! うわぁーん!!」

 ブリイズの周囲には、死肉に群がる小動物以外にはひとかけらの生命もなかった。

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