チェルノブイリを舞台にしたFPSです。
オープンワールドを売りにしてる印象があったのですが、実際のところはほぼ一本道展開でした。
寄り道や探索もできるものの、ほとんど意味がない。マップ自体、後戻り可能な幅広一本道という形です。(終盤では後戻りもできなくなる)
前評判から期待したものとは全然違っていました。でもゲームとしては面白いです。
戦闘のできがかなりいい。難易度はかなり高い。
コンセプトは全然違いますが、プレイ感はバイオハザードとかデッドスペースを思わせます。
所持品の取捨選択に頭を悩ませるリソースやりくりゲームが好きな人におすすめ。
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●システム
重量制限厳しめのサバイバルFPSです。
武器、防具、弾薬、薬など全てのアイテムに重さが設定してあります。
総重量が50kgを上回るとスタミナの消費・回復が遅くなるなどの不具合が出はじめ、60kgを越えるとまったく動けなくなります。
クエストを受注し仕事をこなすことで金やアイテムをもらえます。
が、報酬がかなりしょぼい上にクエスト自体が自動生成のつまらないものばかりなので、ほとんどやる意味がありません……。
武器の命中率が非常に悪いです。
一方、敵のアーマーがものすごく固く、胴体狙いだと至近距離でアサルトライフルのマガジン一本打ち尽くしても倒せないこともあります。
とはいえ一体ずつ丁寧に倒していくゲームだと思えば楽しめます。僕はけっこう好き。
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ダッシュやジャンプでスタミナを消費します。
そしてこの回復がものすごく遅い。(所持重量によってかわるらしい)
しかも歩いていると回復しません。重量50kg越えてると歩くだけでも減る。
これのせいでものすごテンポ悪いゲームになっている……。
ゼロから満タンになるまで10~20秒かかります。
CTRLを押すと中腰、その状態でSHIFT押しっぱなしでしゃがみというシステムです。
正直、かなり使いにくいぞ……。
ロード後などにCTRLの効きが悪かたりするのもつらい。
QとEでリーンできます。
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マップは幅広の一本道形式で、スタート地点から終盤エリアまでほぼ一直線でつながっています。
オープンワールドにしては狭く、一本道にしては広いという微妙なサイズです。
終盤になると明確な一本道になります。
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食事要素があります。が、食料は頻繁に手に入るうえにそれほど空腹状態にならないので、煩わしく感じることはないと思います。
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装備すると様々な特殊効果を得られる「アーティファクト」というアイテムがあるものの、大半のアーティファクトはデメリットの方が大きいので装備する意味がありません。
売るとけっこう儲かるものの、重量制限のせいでほとんど持ち帰れません……。
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戦闘の難易度は相当高いです。
序盤はちょっと信じられないくらいきつい。開始2~3時間がゲーム中一番むずかしい。
被ダメージが高いのにこっちの弾は全然当たらず、弾薬も少ない。どうしろというんだ……。
普通にプレイすると確実に弾が無くなりそうな場面があったんだけど、あれは調整ミスなのか僕が何かを見落としていたのか。
いっぽう回復は大量に出るので、惜しみなく使っていけば体力的にはわりと何とかなります。
中盤からは弾もけっこう手に入り、普通の高難度ゲームになります。
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いちおうステルス要素があるものの、敵は超感覚で気付くのでほとんど機能していません。全然気づかないときもある。
ステルスゲームとしてみると、2007年の作品としては相当しょぼいです。
スカイリムやフォールアウトのような、「反応は明らかに変だけどこういうゲームだからいいの!」と割り切ったステルス要素ではなく、リアルを追求してるっぽいのに凄まじくお粗末という感じが悲しい。
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敵の戦闘アルゴリズムの出来はかなりいいです。すばらしい。
僕の中ではメダルオブオナーエアボーンと並ぶ良アルゴリズムだ。
敵が隠れたところに照準を合わせて待っていてもなかなか出てきません。しつこく待ってると後ろに回り込まれたりします。
また、敵に発見されているときに、装備整えたり倒した敵のアイテム漁ってたりしてもいきなり襲われます。
敵が相当離れてても比較的短時間で襲われるので、これはたぶんこちらの入力(状態)を見て行動パターンを変えてるんだろうな……。(構えて待っていると全然寄ってこない)
敵がグレネードを投げてこないことだけが惜しいです。
しかしこれでグレネード投げられたら手に負えないほど難易度が上がりそう。
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●グラフィック
これはすばらしいです。
廃墟探検ものとしては一級品でしょう。
今となっては優れているというわけでもないのですが、題材がチェルノブイリというだけで40代以上は興奮するというもの。
終盤はかなりワクワクします。
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●ストーリー
ストルガツキーの小説というか映画版の「ストーカー」まんまの設定とか出てくるわりには、全然関係ないらしい。
権利問題とかでいろいろあったんだろうな……。
ストルガツキーのストーカーは「とにかく不可解」というのが魅力の一つだったものの、本作では不可解な部分をありきたりな解釈で明かしてしまうのが若干残念でした。
まぁ世界展開で売るゲームならこれも仕方ないだろう……。
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マルチエンディングのようです。
若干注意して進まないと真エンドに辿り着けないかもしれません。
(目的地がマーカーで指示されないクエストがあり、これを無視してもゲームが進行してしまう)
僕は普通にプレイして正規エンドでした。
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●感想
「オープンワールドで様々な人物・陣営・野生生物がリアルタイムで生活している!」みたいな評判を聞いていました。
実際プレイしてみると、たしかにそういう部分はあるものの全然生かされていません。
実は僕も内部に独自の生態系をもつゲームを作ろうといろいろと考えているのですが、これは基本的にうまくいかないのですよ。
全エリア制覇が目的のSLGやRTSならいけるけど、リアルタイムのアクションゲームだとかなり難しい。
内部的に複雑なことをやっていても、プレイヤーからするとランダム生成やスクリプト生成、一定時間でリセット・リスポーンと区別がつかないのです。
さらに、この手のシミュレートは、「各ユニットが同等の力なら数の多いほうが強い」というのがほぼ確実なので、複数の陣営が戦ってる世界ですよという体裁を整えるためには、定期的に負け陣営にテコ入れをしていく必要があります。
しかしテコ入れをやりすぎるとシミュレートの意味が薄れてくる。
また、プレイヤーの影響力が大きいと簡単に地区を制圧できてしまい、逆に影響力が小さいと何をやっても大して変わらないのであまり意味がない。そして制圧成功したところで「だからどうなるの?」となってしまうわけです。
SLGなら地区の制圧を大きな目標としてゲームが進むからいいのですが、冒険が目的のアクションゲームだと扱いがむずかしい。
テコ入れで敵対陣営を追加するのも、定期イベントっぽくなってシミュレートの意味が薄れたり、対応が面倒なだけになったりする。
メインクエストで訪れるエリアの100~1000倍くらい無関係なエリアがあれば、生態系を実感しつつ一本のシナリオを楽しめるようにできそうなものの、そうなると必要となるメモリや計算量がとんでもないことになってしまう。
(世界を巨大にすると、プレイヤーの周囲だけみればある程度の影響力になるが、世界全体で見ればプレイヤーの影響力は相対的に小さくなり、それなりの安定状態に落ち着く)
こういうのはたぶんこれまでもいろんな人が試みたんだけど、これといった成功例が見当たらないのは皆同じような問題にぶつかってしまうからなのでしょう。
たぶん本作のスタッフも気づいていて、社内でも激論が交わされたのだろう。そしてそれを押し通した結果が本作なのだろう……。
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移動の遅さ、重量制限、売買制限、一本道にしては広いマップといった要素が悪いほうに噛み合って、すごくもったいないゲームになっています。
武器二丁・防具・弾薬・回復を持つとそれだけで重量制限いっぱいです。アーティファクトを売って儲けようと思っても、重さのせいで持ち帰れません……。
荷物満載では歩くだけでスタミナ切れし、時々10~20秒ぼーっと突っ立って回復待ちです。
そしてマップは幅広一本道。
弾が少ないのに野犬の襲撃があったりして、勘弁してくれという感じですよ……。
とにかく行ったり来たりが大変なので、開始1~2時間の段階で「サブクエストはどうでもいいや……」となってしまいます。
これに関係して、各陣営の好感度もどうでもよくなります。
アイテム持ち帰れないので探索もどうでもよくなります。
本作の売りの半分くらいが失われてしまいましたよ……。
武器はいろいろ出るものの、どちらかというと武器より弾が大事なので、弾の入手が容易な武器をメインで使っていくことになります。
いい武器を手に入れても、弾がなければ重いだけの荷物ですよ……。
アイテム売買できる相手が限られているのもかなり惜しいです。
なんでも売買できる人(ショップ)は三人しかいません。
マップは幅広一本道なので、探索エリアとショップの間をひたすら往復することになります。
そのへんの人でも食料や回復程度なら取引できるものの、武器弾薬といった重くてたくさん手に入るものは取引できません。
これができれば移動も重量も弾薬も相当楽になっただろうに。
リアリティ重視はわかるけど、ここまでの制限は必要ないだろう……。
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さまざまな陣営があるものの、主人公の行動によって関係が変わるのは3陣営しかありません。
下手に敵対すると面倒なので陣営サブクエストは全部無視でした。
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これらの理由により自由度が厳しく制限されており、一本道ゲームとして見たほうが評価できるという変なことになっています。
ノロノロ歩いて同じ道を何度も何度も往復するより、どんどん突き進んで一本道FPS的として遊んだほうがおもしろいのですよ。
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歩きでもスタミナが回復し、基本重量70kgくらいの緩い設定なら面白さ五割増しくらいになったのではと思います。
今の仕様では相当人を選ぶゲームなのではあるまいか。
楽しく遊ぶにはMOD使用推奨というか。
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終盤になると元のマップに戻れなくなり、武器が強くなり、重量制限も緩和され、明確な一本道になり、格段に面白くなります。
それでいいのか。
弾は大量に取得でき、武器も二つ持て、後退を考えずどんどん進んでいけます。
ゲームのコンセプトぶち壊しな感じがあるものの、おもしろいのだから仕方ない……。
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終盤は雰囲気もすばらしくて最高です。うおー! チェルノブイリに来たぞー! という感じ。
しかし最終盤のワープ連発はどうなんだろうと思いました。
僕は自分の足でチェルノブイリを探検したいんだよ……。
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荒野を放浪するサバイバルアクションとしては圧倒的にフォールアウト3のほうが出来がいいです。
もちろんコンセプトは違うんですが、皆がストーカーの宣伝を見て期待するものの大半がフォールアウト3に入っていると思います。
本作は、人に薦めるのは悩んでしまう出来でした。
とはいえ個人的にはすごく楽しめました。
よわよわの主人公で敵一体一体を工夫して倒すのが好きな人にはおすすめできます。
微妙な出来の序盤でも、敵拠点を攻めるときなどは建物の裏に回ったりして好きなように戦えるのはいい。
戦闘はほんとうに素晴らしいので、これを体験するためにプレイする価値はあるかも。
あと、僕は基本的に『公式至上主義』なんですが、本作の場合は重量制限軽減MODとか使った方が楽しめるかもしれない。
70kg持てれば序盤もかなりおもしろくなると思います。
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開発元 | GSC GAME WORLD |
発売日 | 2007/03/20 |
プレイ記録 | |
難易度 | STALKER(NORMAL)クリア |