僕のおすすめSF一挙公開!
長編篇。かなり偏っていると言わねばなるまい……。
思い出して書いているので説明文には間違いがあるかも。
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※ハードSFについて
ものすごく勘違いされがちなんだけど、ハードSFというのは「ミリタリー感のあるSF」「シリアスで冷酷な展開のSF」「設定が緻密で凝っているSF」ではないです。
現実(現代)の科学に基づき科学性を重視しているタイプのSFといえます。
例えるなら、軌道エレベーターが出てきてそれに関するおもしろネタで攻める作品は普通のSFで、軌道エレベータの素材や力学計算を緻密に行い建設や運用などを重視しているものがハードSFといえます。(建設や運用が重要というより、理論的なものが話の根幹部分に来るのが重要ということ)
ものすごく乱暴な言い方をすると、執筆の際に作者が最新の理論に基づき計算したり作図したりしてるようなタイプの作品です。アイデアをこね回すだけではなく、数字による裏付けが必要という感じでしょうか。
ハードSFとしてはラリィニーヴンの短編がすばらしく、科学ネタを「謎」に据えてそれを解明するという形で最新理論を紹介しています。まぁ40~50年前の作品なので今となっては古かったりもするんですが……。しかし、あまりにも最新の理論だと慣れていてもついていくのがつらいので、初心者がSFの世界知ろうとするにはニーヴンくらいが最適とも言える。
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●虎よ虎よ アルフレッド・ベスター
僕がSFにはまるきっかけとなった作品の一つ。
テレポーテイション能力が一般化した社会での復讐物語。
あまりにも傑作すぎていろいろな名作漫画の元ネタになったりしている。
最終章が絶頂悶尿失禁物のかっこ良さだけど全然ピンとこない人もいるようで、SF的な感受性を試される作品かもしれない。
大筋はモンテクリスト伯で、プロローグは二都物語のパク……オマージュだったりする。
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●遠き神々の炎 ヴァーナー・ヴィンジ
集団知性を持つ犬モドキが出てくる。
一定数の群れでないとまともに思考できないので、群れを構成する個体が死んだら補充しないといけない。
当然のことながら、メンバーが変わると性格や記憶の一部が変わる。
これはおもしろそう過ぎる……。
世界(宇宙)設定も凝っている。
銀河外縁に行くほど知性体の知能が高くなる。生物だけでなくコンピュータの処理能力や宇宙船の推進能力もあがる。
銀河中心ではろくに思考もできず、銀河の果てには神仙と呼ばれる超知性が住んでいる。
普通は「銀河中心ほどすごい!」となるところを、逆の設定にして世界を構築していったところがうまい。
この設定だけで勝ったも同然といえる……。
壮大な宇宙SFパートと奇妙な生物との冒険パートがからみあって一味違う作品となっている。
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●ありえざる都市 デイヴィッド・ジンデル
壮大な宇宙SFパートとネアンデルタール人の生活パートがからみあって一味違う作品となっている。
数学の証明を使って宇宙船を航行させるというアイデアがかっこいい。
スケールの大きな力作スペースオペラなんだけど、ラストでとんでもないご都合主義により問題解決になるのが困る。
それまでの冒険はなんだったんだ……。
でもまぁラスト以外はなかなかの傑作と言える。ほんとラスト以外は傑作……。
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●タウゼロ ポール・アンダースン
加速し続ける宇宙船の話。
こう書くと短編でありがちな一発ネタっぽいけど、この一発ネタから引っ張り出されるドラマのすごさは尋常ではない。
すさまじい大絶望と戦う本格的なハードSF。
科学を知らなくても内容を少しずつ理解しながら楽しめる、ハードSFの教科書といっていい作品。
名作中の名作で、あまりにも名作過ぎて困る。
さすがに今見ると古い部分もあるけど、名作なので問題ない。
今回のリストでどれか一冊だけ読むというならこれ読んどけ。
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●ディアスポラ グレッグ・イーガン
中編「ワンの絨毯」を修正して組み込んである。
SFマガジンで中編版「ワンの絨毯」を見た時、「これが僕の期待していたサイバーパンクなんだよ!」と思って大興奮した。
逆に言えば、当時流行したサイバーパンクはこういう部分がおろそかにされていたので興味を持てなかった……。
ワンの絨毯に関しては中編版のほうがテーマ的に綺麗にまとまっていたと思う。
セルオートマトンやライフゲームについて知っておくとより楽しめる。
ニコニコ動画の「ライフゲームの世界」という動画があまりにも素晴らしい出来なので、よく知らない人は見ておこう。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19347846
技術系の解説動画ではあるものの、最上級のSF作品と同等の感動を味わえるぞ……。
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ワンの絨毯では、絨毯のイメージが掴みにくいけど、これは縁の部分での化学反応が演算に相当する。木の年輪みたいに結果が積み重なっていく。
面積が広がること=演算が進むこと=内部世界での時間の進行になっている。
化学反応の条件の関係で縁の部分が全部同じ割合で成長するわけではないので、ぐにゃぐにゃ波打ったりして一見複雑な構造になっている。
長編としてのディアスポラは、傑作中の傑作、僕のSF史上ベスト10に入れていいくらいの大傑作だと僕は思っている。なんならベスト5でもいいぞ。ベスト3もいけそう。
長編五冊分くらいの内容が詰まっていてほんとすごい。
章ごとに様々な危機が襲い掛かり、中短編を繋ぎ合わせた串だんご型の構成とも言える。しかしそれぞれの出来事がちゃんと意味を持って繋がり、壮大な結末に向かって収束する。
本作のラストには、SFでしか味わえない感動がある。
しかしまぁ、内容はかなり難解で、特に第一章が一番難解なのではあるまいか。コンピュータ上で生命の発生をシミュレートしている。物語的な盛り上がりもいまいちなのできつい。ここで挫折して「イーガンはわからん」という人もいるかもしれない。しかし、この部分は過去のイーガン作品含めても特別にわからないところなので、なんとか我慢してほしい……。
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●順列都市 グレッグ・イーガン
作中に出てくる「塵理論」が難解だ難解だと言われるけど、自分でもこういうことを考えたことのある人はけっこういるのではないだろうか。「猿がタイプライター打ってシェイクスピアの戯曲ができあがる」(無限の猿定理)という話のバリエーションとも言える。
SFファンなら割と普通に考えることのような気がする。なぜ発売当時あれほどわからんわからんと言われたのか。
長年頭の中でモヤモヤしていた問題が、じっくり考察されおもしろい物語として形になってるので、僕は嬉しくて感動したわけです。ほんとイーガンさんの作品は痒いところに手が届きますよ……。
上にも書いたように、僕がサイバーパンクに期待してたのはこれなんですよ。
本作もセルオートマトンに興味ある人におすすめ。
順列都市の「発進」自体本当は意味ないよなと思うものの、イーガンの作風とか信念としては「理論上正しいことでも実際に手と頭を動かして体験すべき」みたいなのがあるので、発進の段取りが必要だったのだろう。物語的な盛り上がりも必要だし。
そして、この話って将来的にありえるじゃん!?という感じだけど、本作では人間の思考を完全にデジタル化できると決めている所に騙しの手口がありそうだぞ……。まぁ個人的には、意識とか精神とかはそれほど神聖なものではないと思っているので、決定論的な世界での意識・精神活動というのもありえるだろう……。
さらに、プログラムとして動作するデジタル意識が、分子レベルのシミュレートで作られた生物と奇妙な対立関係になるところもおもしろい。
しっかり計算されている方が強い!というのは短編の「暗黒整数」にも通じる部分がある。
まぁとにかく大傑作なのでおすすめ。
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●タイムマシン H.G.ウェルズ
元祖SFといえる作品。
どうせ浅いタイムパラドックスを扱った不思議作品なんだろ!と思っていたけど、超ハードな暗黒未来絵巻で腰を抜かした。
とにかくすごい。
近頃流行り?のディストピアSFの原点はここにあるぞ……。
美少女との冒険もあるし、そのままアニメ化してもけっこう受けるんじゃないか。
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●地球の長い午後 ブライアン.W.オールディス
植物に支配された終末期の地球を舞台にした話。大人のための暗黒ジュブナイルSFといえる。
ナウシカとか暁星記とか宝石泥棒とかが大きく影響を受けていると思われる、SF原点作品のひとつ。
全篇にわたって欝々とした絶望感が漂いまさにイギリスSF。
ラストの主人公の言動もパンク度が高くて熱い。
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●天の筏 スティーブン・バクスター
重力定数が10億倍の宇宙を舞台としたハードSF。
重力が10億倍ではなく重力定数が10億倍なので、単純に重力が大きいというわけではない。
磁力のように接近するほど引き合う力が強くなる。人間同士が向かい合っていても重力の影響を感じられる。
未来のない世界での陰鬱な冒険物語という面もある。これも暗黒ジュブナイルSFといった感じ。
やはりイギリスSFはいい……。
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●時間的無限大 スティーブン・バクスター
量子論もののハードSF。
すごい。
ワームホールを用いたタイムマシンもでてくる。
すごい。
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●永劫回帰 バリントン.J.ベイリー
ベイリーのスペースオペラ。彼の作品の中では圧倒的にわかりやすく、単純にかっこいい。
いわゆる「ワイドスクリーンバロック」と言われるタイプの作品で、スケールが大きくてスピード感があって異様な迫力がある。
ベイリーは「時間衝突」も名作なんだけど、物語的にわけがわからないというかアイデアだけで興奮できる人向けなのであまりおすすめはしない。
ベイリーのスペースオペラとしては「スターウィルス」という作品もあり、これもわかりやすくておすすめ。
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●逆転世界 クリストファー・プリースト
線路を施設・撤去しながら進む移動型巨大都市の話。
世界設定が奇天烈すぎてめまいがする。
タイトル通り世界がひっくり返る感覚を味わえて、「僕がSFに求めているのはこれなんだよ!」という感じ。
ディックが好きな人も気に入るかも。全然違うかも。
そしてこれも閉塞的で欝々としていてイギリスSF感が強くていい。
ちなみにこの作者は映画「プレステージ」の原作を書いた人。話のタイプは全然違うけど、ひっくり返る衝撃には共通のものがある。
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●ザップガン フィリップ.K.ディック
薬物を使用してトランス状態に入り、新しい兵器のアイデアを掴む人の話。
舞台は冷戦が進行した世界で、兵器デザイナーが花形職業となっている。すごい兵器を開発したぜ!と宣伝することにより敵側に圧力を与えている。冷戦時の宇宙開発みたいなもんか。
しかし実はその兵器というのは現実的ではない理論上のものなのだった……。
そこに宇宙人の侵略があり、主人公は東側のトップデザイナーと共に本物の兵器のデザインを依頼される。
その後ものすごい展開になったり、真の兵器の正体がものすごいものだったり、わけがわからないけどとにかくものすごい作品。
ディック界では駄作扱いなんだけど、僕からすると最高傑作と呼んでいいほどの名作である。
高い城だの流れよわが涙云々だの、あの辺りは眠いだけで心底どうでもいい。
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●タイタンのゲームプレイヤー フィリップ.K.ディック
本格ミステリの体裁で始まるわけのわからない話。
途中で殺人とかどうでもよくなる。
そしてとんでもない相手と人生ゲームで戦うことになる。
ディックのすごさはこういうところにあると思うんだよ……。
ディック界では駄作扱いなんだけど、僕からすると最高傑作と呼んでいいほどの名作である。
ついでに僕おすすめの他のディック作品を書いておく。
・死の迷路 そして誰もいなくなった系のサスペンスだけど最後えらいことになる。
・ユービック ディック作品の中でも現実崩壊感がわかりやすくていい。入門用と言える。
・暗闇のスキャナー 評価の高いディック作品は大抵眠くなるけどこれは好き。
アンドロ羊、パーマーエルドリッジ、去年を待ちながらあたりも、まぁおすすめといえる……。
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●The Paradox Men チャールズ.L.ハーネス
ワイドスクリーンバロックの代名詞とも言える作品。
近未来を舞台にしたアクションものだが、大量のアイデアが投入されすごいことになっている。
邦訳がなく、長いこと名ばかり高い伝説の名作という扱いだったけど、近々翻訳されるらしいぞ……。
僕はあまりにも読みた過ぎて原書で読んだ。
時空を横断する壮大な物語のラストの決め台詞が「えっ? それなの?」という感じで、邦訳されると面食らう人もいるかもしれない。海外ではどういう受け取られ方なのかな……。
しかしほんと名作なので期待に震えながら待つがよかろう。
唯一の邦訳長編「ウルフヘッド」は凡作扱いなんだけど、全篇に漂う孤独感やラストの寂寥感がものすごいのでそういうのを求めてる人にはおすすめする。
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●星を継ぐもの ジャエイムス.P.ホーガン
熱心な推理小説ファンなら、SFに興味なくともこれは読んでいるのではないかという名作。
SFミステリというジャンルでは圧倒的トップではないかと思われる。
ハードSF的な展開ながら、SFファンでなくても問題なく楽しめると思う。そういう意味でもすごい。
月面で発見された謎の死体に端を発する推理もの。
乏しい手掛かりから推理を展開していき(とはいえ途中でガニメデで宇宙船が発見されたりもする)、ものすごい事実を発見するという流れ。
ロジックの鮮やかさだけでなく、その結論がSF的な感動に繋がるのがすばらしい。
憎まれ役に見えたキャラがどんどんかっこよくなっていき、「あれ、主人公こいつ?」となるのもおもしろい。
本作には続編がある。SFとしてはおもしろいんだけど本作の続きと考えると感動が薄れる感じで、なんとも微妙である……。
そしてシリーズ最終作?の「内なる宇宙」では、本筋とは全然関係ないところでものすごいびっくり展開があって(さらっと語られる)、それはないだろ……となる。
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●垂直世界の戦士 K.W.ジーター
とてつもなく巨大な高層建造物を舞台にしたアクションSF。
ビル内では普通の生活が営まれているが、外側の壁面はマッドマックスみたいな世界になっている。
暴走族たちが垂直の壁面を走れるバイクを駆って勢力争いをしている。
主人公は一獲千金を目指すカメラマン/デザイナーで、チャンスを手にしたと思ったら陰謀に巻き込まれえらいことになる。
世の中には「反骨精神」というものを自分の個性として売りにする人がいるんだけど、それは「群れる反骨」であることも多く、僕はそういうのにはなじめない。反骨なのに仲間集めてお互いの顔色窺ってどうするんだよ……。パンク精神はファッション化したらパンクじゃないんだよ……。
しかしジーターが本作で描く反骨は、まさに群れるアウトローを否定しているのでしっくりくる。本作のラストシーンはほんと感動する……。
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ピンバック by レヴュー関係をググってSF本の紹介を探す | とりよみブログ — 2018 年 8 月 20 日 @ 07:13:17