現役物理学者によるハードSF短編集です。
物理学者のハードSFという触れ込みではあるものの、作風はかなり文学寄りで、科学的なアイデアは設定の一部として使っているだけで、メインは登場人物の感情という感じです。
ラリィ・ニーヴンに見られるような、謎解き要素、冒険要素ではありません。
SF的な世界や科学の関わる出来事を、詩的に表現しようとしている印象を受けます。
そのためSFとしての爽快感に乏しく物語自体もかなり地味です。
科学部分を抜いても話が成り立ってしまうという感じでしょうか。
良くも悪くも、科学知識や理解を必要としない作品になっています。
正直言うと僕には合わない作品でした。
話自体はおもしろいんだけど、「現役物理学者のハードSF」という看板から期待するものとは全然違っていて、その落差にガッカリという感じです。
文学小説・一般小説寄りとはいえ、昨今流行り?の「人間を書く」といってチープなメロドラマを繰り広げる作品よりは楽しめると思います。