グラフィックはかなり頑張っていてシステムもおもしろいです。
しかしゲームとしての出来があまりにも残念でもったいない作品でした。
序盤はかなり難度が高く、ぎりぎりの物資でやりくりするサバイバルホラーもののような展開が続きます。
しかし中盤で特殊能力を手に入れると主人公が圧倒的有利になり、とてつもなく簡単になります。
システム担当者とレベルデザイン担当者の意思疎通が完全に断絶してる感じで、ゲームバランス崩壊ですよ……。
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つまらなくはないけど今からわざわざやる意味もなさそうな作品でした……。
先日感想をアップしたダークセクターと似た感じではあるものの、あっちのほうがバランスがまともなぶん楽しく遊べると思います。
各スタッフはいい仕事をしているのになぜこうなるのだろう。
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●システム
時間を操作するFPSです……と言いたいところですが、時間を操作できる対象があまりにも少ない上に「それを時間操作と言っていいの?」
と感じるものが多くすごくモヤモヤします……。
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固有システムとしては
○物体を引き寄せる・飛来物をキャッチする・投げる
○仕掛けを直す・壊す(これが時間操作らしい)
○一定範囲の時間をスローにする弾を撃つ
などがあります。
他に衝撃波と即死攻撃がありますが、固有システムというほどではない……。
しかも、引き寄せを使える対象物がほとんどないのですよ。
ドラム缶等の爆発物と足場用の箱、あとはごくまれに瓶とか箱が落ちてるくらい。
物体引き寄せ能力を持つFPS/TPSの中でも、飛び抜けて使用機会が少ないのではあるまいか。
仕掛けを壊す・直すなんて対象がほぼ無くて、進行上の鍵の役目にしかなっていない……。
これで「時間操作FPS!」を名乗るのはかなり無理がある気がする。
物体の破壊&修復はレッドファクションアルマゲドンが似たシステムでした。
レッドファクションでは、ほぼすべての人工建造物を更地になるまで破壊でき、元の形に戻すこともできます。しかも何の制限もなく破壊&修理できる。
使わなくても先に進めるようになっていましたが、無理矢理使いたくなる面白さがありました。
普通に武器で攻撃したほうが早いものの、建物を破壊して崩落に巻き込んでニヤリとするわけですよ。
スローにするやつは本作の一番の売りというか使用頻度が高くおもしろい部分なんだけど、使用条件が緩くてあまりにも強いのでゲームバランスが崩壊しています。
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他に特殊武器として、
弾丸を操作する狙撃銃
弾を遠隔操作で転がすグレネードランチチャー
があります。
しかし使う場面は二カ所だけ。
ほんとなんなんだよこのゲーム……。
宣伝用のアピールポイントを増やすために変な武器を作り、活用するシーンを無理矢理ねじこんだ感じがすごい。
これらの能力や武器がちゃんと活用できるようになっていれば5割増しで面白くなっていた気がします。
いやほんと機能自体は面白いんだけど使う場面がない……。
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マップ上に点在する装置で武器や能力のアップグレードができます。
アップグレードには特定のアイテムが必要です。
敵を倒してポイントを稼ぐのではなく、マップ内に隠されてるアイテムを収集するタイプです。
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ゲーム進行はかなりの一方通行で、ちょっと進むだけで扉が閉まったりして戻れなくなります。
アップグレードの関係でじっくり探索したいわけですが、相当気を付けてないと知らないうちに正解ルートに進んでしまいますよ……。
行き先表示機能(PS3では十字キーの↓)を駆使して正解ルートを回避しましょう。
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一方通行型の一本道進行なのにチャプターセレクトがありません。
つまり取り逃したアイテムを取りに戻れない。
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●グラフィック
かなり素晴らしいです。
背景の作り込みは相当気合入っている。
壁にへばりついているグロテスクな異世界植物?も気色悪い。
あとミイラ化した死体もしっかり作り込んである。
敵が死ぬときの悶え方もすごい。焼死する兵士はかなりかわいそうな感じですよ……。
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ただ、似たような廃墟ばかりが舞台なので単調に感じるのは否めない……。
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●感想
分業型製作体制が極まったという感じです。
各部署は良い仕事をしたのに、何も考えずに成果物を合体させたせいでどうしようもない怪作になってしまった。
そういうものだと割り切ってプレイすれば面白いといえる。
しかしちゃんとわかってる人がきちんと統率していれば3倍くらいは面白くなっていただろう……。
こういう残念作品を見ると、メタルギアの面白さとは製作の上層がレベルデザインの細部まできっちり監修してるからなんだろうなと感じますよ。
分業により人海戦術でクォリティの高い素材を作り出し、それを納期内になんとかつなぎ合わせてガラクタを作る感じが、欧米のゲーム開発の一面を表してる感じで興味深い。
欧米では巨額の宣伝費をかける関係で納期(発売日)が非常に厳しいらしく、そのせいでこういう見た目はすごいのに調整がおかしいゲームができてしまうんでしょう……。
この時代のB級FPS/TPSはほんとこういう惜しい作品が多いですよ。
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売り文句から期待する楽しさは全く味わえないものの「遊べる失敗作」としては悪くないです。
駄目な作品ではあるがクソゲーではない。
文句ばかり書いたけどつまらないわけではないので、駄目ゲーの中ではかなり優秀と言える。
コンシューマ版は厳しい評価が多めな一方steam版はわりと好評のようで、steamユーザーの優しさを垣間見た感じです。
僕も文句ばかり言ってちゃだめだと反省してしまいますよ……。
しかし本作はいろいろと惜しすぎる。
面白くなる素質はたっぷり持ってるのにそれをまったく生かせてないと言いましょうか。
変な作品が好きな人はプレイして損はないかもしれないような気がほんの少しだけしますよ……。
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開発元 | Raven Software |
発売日 | 2010/06/29 |
プレイ記録 | Normalクリア |
照準アシストOFF |