イタリアのテクニカルパワーメタルバンドの7thです。
前作のメンバーチェンジでメインソングライターだったギタリストが脱退し、本作では看板シンガーのティッタ・タニまで脱退してしまいました。
どーすんのこれ……という感じですが、なんとタニに負けず劣らずの強力なヴォーカリスト「マーク・バジル」が加入し大復活を遂げています。
ミケーレルッピのような、アクの少ないまろやかな声質でしょうか。よく伸びるいい声です。
個人的にはタニのほうが好みなものの、これだけの後任がすぐに見つかるとは驚きです。
ちなみにバンド名のDGMというのはバンド創立メンバーの頭文字をとってつけたものだそうで、前作でのギタリストの脱退により「D」「G」「M」の全てがいなくなっています。
作曲クレジットも全てシモーネ(新ギタリスト)とバジルになっており、もはや完全に別バンドとなってます。
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前作に引き続いてネオクラ的なフレーズが減っています。歌メロも、メロディアスハードやAORのようなさっぱりしたものになっています。
疾走パートもあまりなく、Misplacedの再来を期待するとガッカリしますが、曲やメロディはしっかり練られており聴きごたえがあります。
僕も、最初はガッカリしてBGMがわりに聴き流していました。でも何度も聴いてるうちにすっかり愛聴盤になってしまいましたよ。
前作のライナーでシモーネのプロフィールを確認してみると、影響を受けた音楽としてJourney、Kansas、TOTOなどの産業ロックがあげられています。いわゆる「クサメタル」とは違う方向性になったのも納得です。
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凝った展開や変拍子が頻出するプログレ寄りの楽曲が揃っています。しかしキャッチーな歌メロと素晴らしいヴォーカルのおかげで、この手のバンドとしてはかなり聴きやすく、万人におすすめできる作品になっています。
サウンドプロダクションも良好です。ギターを主体にしながらキーボードで大きく空間を広げている感じでしょうか。豪華な印象です。
ミキシング・マスタリングはシモーネが行っています。DGM加入前はサウンドエンジニアもやっていたそうで
12曲目はボーナストラックで、インドネシア出身の女性歌手Anggunの「Rose in the wind」のカバーとなっています。ブックレット・解説には曲名しか載ってません。せめてアーティスト名くらい書いておいてほしい……。
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Misplacedにあったような失禁モノのメロスピが皆無というのはやはり悲しいですが、それでも完成度の高い傑作です。
コテコテのイタリアンメタルファンより、非メタルファンのほうが気に入りそうかも。