個人でPDA端末を作るという夢のある計画があったそうです。その名もMorphyOne。
かつてHP200LXという人気PDAがありましたが、その販売が打ち切られることになり、ファンたちはたいそう悲しみました。
そこに『とよぞう』という人が現れ、回路図を見て「これなら作れますよ」と、HP200LXをバージョンアップしたようなマシンの自作を始めます。
人気機種だったため応援する人がたくさん現れ、あれよあれよという間に会社ができました。
当初は半年で試作機ができるという話だったのに、一年経っても二年たっても完成しません。予約販売までして8000万円集めたのに、結局完成せず、とよぞう氏は破産してしまいました。さらに免責認定され、予約者のお金も戻りませんでした。
というどうしようもない事件でした。夢は破れました。
こんな面白い話があったなんて全然知らなかった。
詳しくはこちらへ。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ryunosuke/6906/
金を払った人は悔しいだろうけど、これはもう金を出すのが間違っているだろうと思います。株みたいなもので、怒ってもしょうがない。先見性のなさが命取りだった。
僕がこの事件を見て興味深かったのは、とよぞう氏の心理状態です。最初は得意満面だったのに、徐々に追い込まれにっちもさっちもいかなくなったんだろうなぁ。
『全部自分でやる』というのはすごいけど、明らかに自分の能力を超えていたんだろう。僕だったらことを大きくする前にとりあえず動くものを作っておくだろう。
すごいことを一人で成し遂げる人物というのは僕の最も尊敬するタイプではあるけど、自分の力を過信したあげくまわりに迷惑かけまくって自滅するのはもう救いようがない。
ハードに疎い人間からするとコンピュータを一から組み立てるというのは異次元的能力です。でも、じっくり考えてみると、今のコンピュータというのは、メモリ、CPU、入出力装置、電源など各々が規定の規格でできているので、適切な配線でつなげていけばいいわけです。
PCのマザーボードについてる抵抗やコンデンサというのは、各チップに規定量の電流を流したり、電流が逆流したりしないようにするためのものなんでしょう。「この素子のこの端子にはこれだけの電流を流す」というのが決まっていて、コンピュータを設計するときのおもな作業は、その配線や組み合わせを考えることではないでしょうか。
だからとよぞう氏は、これなら簡単にできると思ってしまったんじゃないかと思います。ゲーム作りでも、大筋のプログラムを思いつき、「これならいける!」と思って作っているうちに、意外なところに落とし穴があってどうにもならなかったりします。簡単な試作プログラムではスイスイ動いていたけど、いざメインプログラムに組み込んだら重くて使い物にならなかったとか。
この事件の場合は、まわりが盛り上がりすぎてしまい一口五万の出資だとか予約金80000円だとかがホイホイ集まってしまったのが悲劇のもとだったと思います。
回路図は公開されてたらしいのに、誰か事前に「これはまずい」と気付く人はいなかったんだろうか。いても盛り上がりのせいで黙殺されてしまったんだろうか。『オープンハード』なのに、そのハード面の不備のせいで完成しなかったというのが惨めだ。
結局この件で得をしたのは部品屋だけです。もしかしたらこの部品屋は「これは無理っぽい」と気付いていたためさっさと部品を売りつけたのかも。
とよぞう氏の買い込んだ数千万円分の部品がどうなったのかがちょっと気になります。全部売り払ったのかな。
本人は純粋に『オレならやれる!』と思ってはじめて、少なくとも当初は詐欺をする気なんて全くなかったんだろうな。前代未聞の快挙を成し遂げる英雄になる気まんまんだったんだろう。
しかし、人は分不相応な大金を手にしてしまうと、まともな判断さえできなくなる。自分はこれだけの金を動かす人間だ!と思ってしまったのではなかろうか。プロジェクトも後半になると、切羽詰っているのに人の手を借りたがらなかったようです。まぁこれは最初からそんな感じだったようですが。
どっちにしても、8000万円もの巨額がかかっているのだから、冷静にプロジェクト成功を目指してもらいたかったものです。
これがもし有能なリーダーの下で数人のチームを作って開発していたのなら、うまくいっていただろうと思います。まぁ、有能なリーダーがいればうまくいくのは当たり前か。
けっこう夢のある企画なだけに、最悪の終わり方をしてしまったのが残念です。
関係ないですが、とよぞう氏はロリ同人を描いていたようです。「ロリでもでかいことを成し遂げられるんだ!」とロリの英雄になれるところだったのにもったいないことです。
と、なぜこんな過去の事件を今になって掘り返したかといえば、それは1チップMSXの話からリンクを辿ったからです。
1チップMSXとは、パソコンのテレビにつないだりパソコン用のキーボードが繋げたりできる新型MSXのことです。カートリッジスロットも2つついていて、データの記録はSDカードです。エミュレータではない、実機のMSXを復活させる計画なわけです。
元MSXユーザーである僕としてはちょっと興味があるので、記事をいろいろ見ていました。
はっきりしたことはわかりませんが、実機と同等の速度で20000円だそうです。それはいくらなんでもありえない。モード切替で100倍速くらいはできてもいいのではないか。PSPが同額で買えるというのに。
こっちはMorphyOneと違い無事発売されそうな雰囲気ですが、性能的に夢がないのが残念です。
・僕が欲しいMSX
MSX、2、2+、TurboRの4モードが選べる。
NintendoDSサイズで液晶画面とキーボード付き。単体で動く。タッチペンが使えれば言うことなし。
動作速度はスイッチ一つで切り替え可能。
乾電池駆動が可能。
せめてこれくらいの機能は欲しいです。
値段は3万くらいなら買うかも。
というか、実際のところ単体でゲームの作れるPDAならなんでもいい。
参考になったらクリック!
2006 年 10 月 23 日
MorphyOneと1チップMSX
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