リング、らせんに引き続きループを読みました。
前作、前々作はSFミステリ風の作品でしたが、今作はいっそうSF度を高めています。
しかし、作者はSFとかコンピュータのことをまったく知らないのか、設定に致命的な欠陥がありまともに読めたもんじゃありません。
作中にでてくる「ループプロジェクト」のコンピュータがとにかくすさまじい能力で、現代(話中の時代)の技術レベルを100年以上超えてしまっています。いや1000年たっても無理だろう……。メモリと演算速度がありえないことになってます。
とあるウィルス疾患の治療法を探すのが主人公の目的なんですが、このコンピュータを使えばものの5分で解決するんじゃないかというくらいです。
しかもこのループプロジェクトは、一度シミュレーションが行き詰っただけでなぜか計画が凍結されています。シミュレートの時間軸は自由に動かせて介入もできるというのに、なにもせずに放棄してしまうわけです。まったくわけがわからない。
リング等を読んだ感じではいろいろ資料を調べて書く人という印象だったのですが、今作はいきあたりばったりに適当に書き飛ばしたようにしか見えません。
ラスト近くの展開なんかもうムチャクチャ。
実はこの破綻した世界は最後のどんでん返しのための仕掛けなのかと思いきや、ラストでは破綻をさらに強固に塗り固めているしまつ。恐れいったよ。
なんというか、密室推理小説にどこでもドアがでてきて、みんなそれを普通に使ってるくせに、なぜか事件が解決できないという感じ。それくらいの破綻がある。
と、ひどいことばかり書きましたが、これをSFとしてみるからいけないんであって、軽いエンタテイメント小説としてみればそこそこの出来かもしれません。
論理性や科学的な整合性を求めない「トライライトゾーン」系の不思議な話と見ればいいわけです。
言い方をかえれば、SFまんがとかハリウッド製SF映画のノリです。
実際ネットでレビューを見ると絶賛している人が山ほどいます。
かなり壮大なビジョンが展開される話なので、SFをまったく読んだことがない人からすればすごいショックを受けるのかもしれない。
主人公が病気の治療をもとめていろいろ推理しつつ冒険する話とみればいいわけです。
参考になったらクリック!
2007 年 4 月 15 日
鈴木光司「ループ」
コメントはまだありません »
No comments yet.
RSS feed for comments on this post. TrackBack URL