最近「同人ゲームの未来!」みたいなイベントがあったそうで、あちこちで話題になっています。
ほーなるほどと思う反面、製作者の中には「商業での成功がゴールみたいな印象を受ける」といった感想を持つ人もいるようです。
これもまた、なるほどなーという感じ。
いや正直言えば自分と関係あるようで関係のない世界のような気がするので、それほど興味あるとはいえないんですが。
しかし人は時として持論を語りたくなるもの。
そんなわけで僕も同人ゲームについていろいろと脳内会議してみましたよ。
いろいろ書いてたら長くなったので、大まかな話題ごとに四回くらいに分けてアップします。
ちなみに元のネタ(IGDAのイベント)とはあんまり関係ありません。
同人ゲームについて思ってることをいろいろ書き殴ったような感じです。
本当は、こういうことは書いてもしょうがないというか、他人の神経を逆撫でしかねない意見もあるので黙っておいたほうがいいんですが、まぁたまには自分語りもいいだろう。
こう、なんですか、あんまり「いい人」みたいに思われて作品や僕自身に対する期待を持たれても困るので、たまにはダメなところもアピールしておく必要があるというか。
1 金儲け目的でゲーム作ってもいいじゃないか!
いきなりこんなこと書くとすごく反感持たれそうだけど、あえて書く!
金儲けというと確かに印象悪いですが、ここはシビアな数字の勝負に挑んでいると思ってほしいですよ。
そして、人気のない製作者にとっては売り上げの数字こそが作品評価の大部分だったりするのです。
フリーソフトで公開すれば感想とかたくさんもらえるじゃんと思う人もいるかもしれません。しかし実はそうでもない。むしろフリーソフトだとろくにプレイされずぱっと見の印象だけで語られてクソゲーの烙印を押されることだってあります。まぁ個人的にはこれもありで、反応が皆無よりも100倍いいんだけど、こういうのでガックリする人も多いでしょう。
僕の場合最初の作品であるGalshellはびっくりするほどあちこちで取り上げられたもののそれ以降はさっぱりでした。
当然有料作品になると感想なんて皆無に近いです。
しかしこっちの場合、一作に1000円なり1500円なりのお金を払ってもらえるわけですよ。1000円というと新入社員の1時間くらいの労働賃金でしょうか。それを自分の作品のために使ってくれるわけです。つまり自分の作品に対してそれだけの価値(期待度)があると思ってくれたということです。これはありがたいですよ。
どうでもいいゴミみたいなソフトに1000円出す酔狂な人なんてまずいないでしょう。なんらかの魅力があるからこそ金を払うのです。
同人作品に対する反応とか感想というのは、おそらく受け手が思ってるよりはるかに少ないです。僕の場合だと夜光蛾4は短い期間でこれまでの作品の倍は売れたものの、紹介される量やサイトへの訪問者数はほとんど増えていません。(減ってるといってもいいくらい。同人紹介系のサイトがことごとく消えてるせいかも)
だからこそ売り上げの上昇は嬉しいのですよ。目に見える形で評価してもらえるのです。
ちなみに今までにもらったメール感想の量で言えば夜光蛾3が圧倒的に多いです。4はDL販売の希望以外は皆無に近い。
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一人でやってるサークルにとってゲーム製作はとてつもなく孤独な作業です。好きでやってることではあるけれど、やはり作品の評判は気になるし報われたいと思ったりもします。しかし必死に作っても正しい方向に進んでいるのかどうかわからない。暗闇を手探りで進んでるよな気持ちになります。自分が楽しんでやってるんだから正しい方向もクソもないといえばそれまでですが、ふと「オレは何やってるんだろう」と思うときもあるわけですよ。
そしてゲームが完成し公開しても感想はもらえない。反応もない。つまり製作の努力は報われない。評判とか関係なくて好きでやってるんだ!と自分の心に言い聞かせても、やっぱりガックリくるものです。
クソゲーと叩かれるならまだましです。多少なりともプレイした人がいるわけです。
しかし何も反応がなければ遊んだ人がいるかどうかさえわかりません。これは悲しい。数ヶ月の作業の結果がネットの海に消えていくのが悲しいのです。
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しかしここで同人作品として有料公開するという手段があるわけですよ。
感想はもらえない、褒められない、人気も出ない……でも販売数は伸びる。前述の通り、1本売れれば「1時間の労働に値する」と評価してもらえたことになるのです。(もちろん一本も売れなければ声をあげて泣くしかない)
賞賛の言葉はなくても「お金」という確実な結果が残ります。ここではっきり言わせてもらうと、世の中にはお金でしか計れないものもあるのです! 金金金って亡者かよ!と思う人もいるかもしれない。しかしこれはもうどうしようもない事実ですよ。世の中の同人作家の一部にとっては、作品の売れ行きだけが自分という人間への評価だったりするのです。
人付き合いができず誰にも相手にされず絵を描いたりゲーム作ったりすることしかできない人は、作品が売れたときだけ自分の存在意義を感じるのですよ。
そしてこういう人ほど1000円の重みをわかってるのではあるまいか。店で1000円を出すとき、これはどこかの誰かがオレの作品を手に入れるために出したお金なんだなぁとしみじみ思ったりします。いやほんと僕もコンビニとかでお金を使うとき、数日前DLサイトでDL数が1増えたことを思い出したりしますよ。
売り上げこそが世界との絆。孤独な世界に差し込む一筋の光なのです。
何を大げさなと思う人もいるかもしれない。だがわかる人には痛いほどわかるはずだ。
いやまぁひょっとしてひょっとするとこういうのは僕だけかもしれませんが。
とにかく売り上げだけが自分に対する評価と考える人もいるのです。
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すると次はもっと良い作品を出したくなってくる。1000円に見合った作品、より多くの人が「1時間の労働に値する」と思ってくれる作品を目指すわけです。
とはいえ金のためだけに売れ線一直線なものを作ってもつまらない。それをやるには仕事と割り切る必要がある。企業のやってる同人ならそれもありだけど、個人でやるのに100%売れ線狙いというのはなかなかつらいものがある。
なので自分が作って楽しいものと売れそうなものの中間点を模索することになります。
これがいい。この売れ線志向が独りよがりな部分を抑えてくれる。分析力さえ正しければ客観的な目になるわけですよ。
そして多くの人を納得させるためにはそれ相応の技術が必要なので、自然と上を目指すようになる。
金儲け主義は諸悪の根源みたいに思う人もいるかもしれないけど、技術的に酷いものに金を払う人はあんまりいません。金が儲かるレベルのものはそれ相応のしっかりした作りをしているわけです。
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たしかに「とにかく何が何でも儲かればいい、金が欲しくてたまらない」という感じで売れ線ジャンルを飛び歩き客をATMかなにかのように思ってる人もいるかもしれません。でもそういうことができるのはごく一部の選ばれた人ですよ。作家としての能力が高いからこそできる芸当です。
そういう人の影に、何千何万の「売り上げでしか評価をもらえない人」がいるわけです。
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もちろん金儲けなんて考えなくても技術の向上に努めよい作品を作ることはできます。
しかしなまけものや心の弱い人にとってはこういう心理的な後押しがあったほうがいいのです。
「オレはそんなもんいらねぇ!」という方はフリーですごい作品を出すといいですよ。どのあたりがいいのかというと、タダですごいゲームが遊べて僕がよろこぶ。
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賢明なる読者諸氏はご存知の通り、僕はDLエロ同人出身です。DLエロ同人はまさにこういう世界なのですよ。いや僕がこういう考えになったのは、DLエロ同人出身だからと言ったほうがいい。
DLエロ同人界というのは、自分のやりたいことを追求しつつ技術を磨き分析を怠らなかったものが笑顔になる場です。(紹介画像詐欺という技もありますが、そんなものに頼っていてはいつかは行き止まりに突き当たる)
がんばれば確実に相応の評価がされる。作品単位で見れば、個人が企業を打ち負かすことも不可能ではない。
DL数の数字を増やすために、熱くストイックな戦いが日夜繰り広げられているのです。
気になるサークルがグッとくる新作を出したりすると「くそー、あいつまたやりやがった……」と思ったりするわけですよ。(もう二年以上DLには登録してないので最近は新作チェックをやってないんですが)
「エロで釣ってるだけじゃん」と思う人もいるかもしれない。それでも、「自分が大好きなもの」と「技術追求・努力」と「金儲け」とががっちり繋がっている世界があると知っておいてくださいよ。エロとは言っても、人気アニメのキャラが股おっぴろげて喘いでるだけの絵じゃだめなのです。
特にここ何年かはレベルも上がってきて、僕が以前出してたようなCG集じゃおそらく通用しません。もう長いこと作品は登録していませんが、また、ものすごい変態的エロス作品で挑みたいところです。
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そして今作ってるみっくすまるちぷらいや次のGalshell2も「売れる作品」を目指しています。Galshell2は売れるかという面ではすごく微妙な感じですが、それでも買った人には期待通りかそれ以上の満足を与えるようにするつもりですよ。夜光蛾4よりもすごいキャラがもりもり登場し曲も背景も数段クォリティアップしてると思ってもらって差し支えない。
売れるものを目指して作るというのはそういうことではないかと思うのです。
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「オメーのゲームなんか低レベルすぎて金取るレベルじゃねーんだよこの同人世界の肛門で蠢くギョウチュウが! 引きずり出して下痢便が溢れる肥溜めに叩き込んでやるからそこで思う存分増殖してろボケ!」と思う人もいるかもしれない。
今はそう思ってくれて構わない。だがいつの日かきみも「く、くやしいが金払った分は楽しんでしまった……」と思うのだ。
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結局何が言いたいかというと、金儲け目的でゲームを作るとモチベーションが高まり技術も上がるということです。
だから金儲けのために同人をやってるという意見をあまり悪く言わないでくださいよ。いや金儲けでやってるなんて堂々と言う人はあんまりいないだろうけど……。
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ここで賢明なる読者ならばこう言いたくなるだろう「それで、アンタは言うほど儲かってんの?」
オレはこう答える。
全然儲かってない。
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とても参考になる文章でした。
DL同人はまだ2作しか作ったことがありませんが、このブログを読んでもっと頑張ろうと思いました。
コメント by サクラキジ — 2009 年 8 月 23 日 @ 19:28:52
DL同人は、企業も有名な作家もただの人も同じ条件で勝負できるというところが気にいっています。
二作登録というと、これから登録するたびに過去作も少しずつ売れていくので、DL同人がどんどんおもしろくなっていくところだと思います。
がんばってください。
コメント by 坂葉 — 2009 年 8 月 26 日 @ 00:30:43