●ゲーム概要
くノ一によるセクシーステルスパンチラアクションです。
メタルギアやスプリンターセルのようなリアル寄りのアクションではなく、Shinobi・Kunoichiなどのように派手に飛んだり跳ねたりできるタイプです。
背後から迫り敵を倒すというのが基本ですが、遠くから壁走りで接近し大ジャンプして空中から殺害といった豪快な暗殺も可能です。「派手に攻める隠密ゲーム」という感じでしょうか。
武器はワイヤーの先に刀がついた『鉄弦』で、敵の身体に巻きつけて引きずり倒したり、ピンと張った弦で他の敵を切り裂いたりすることができます。
また、プリンスオブペルシャ(PS2)やico、ゴッドオブウォーなどのようなアスレチック的地形パズルも用意されています。
ボス戦もなかなか凝っていて、倒し方がわからないとダメージすら与えられません。
カメラの視点変更によりいつでもパンチラを拝むことができます。黒のTバックなので食い込みファンには嬉しいでしょう。欲をいえば股間の作りこみをもっとリアルにしてほしかったところです。
ボリュームもなかなかあります。発覚ゼロを目指してプレイすればクリアまでに三十時間くらいかかります。細かいことは気にせず派手な立ち回りを演じていけば十五時間もあればクリアできるでしょうか。
ステージごとにいろんな場面が出てくるので飽きずに楽しめます。
敵を排除したりアスレチックを越えたりしてマップ内のゴールポイントに到達すると次のシーンへ進むという構成です。
敵と接触せずに進むこともできますが、場面によっては鍵を持った敵を倒さねばならないため、殺害ゼロの完全ステルスでクリアするのは不可能です。
回復アイテムが山ほど出るうえにごり押しもそこそこ効くので、とにかくクリアできればいいという人は初級モードで正面突破していけばなんとかなると思います。ただボス戦と一部のアスレチックはクリア方法がわかってないとキツいです。
ステージ開始時のロードはけっこう長いものの、ゲーム中読み込みで中断することはほとんどないです。デモのキャンセルも×ボタン一発でできます。
これは非常におもしろいです。ネットで感想を見るとかなり不評ですが、隠れた名作といっていいくらいの出来でしょう。僕の中では傑作です。
何度も死んでやり直し少しずつクリアしていくタイプのゲームが好きな人には超おすすめです。
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しかし、どうにもカメラ性能が悪すぎです。右アナログスティックで視点変更ができるものの、キャラを移動させると補正が働きカメラが素早くキャラ後方に移動してしまいます。ぎりぎりで踏み切ってジャンプしたいときに不便です。
地形等にカメラが引っかかるとカメラ位置が変わってしまうため、狭い場所で敵の様子を観察しようとしても逃げるようにカメラが動き回り見たい場所を見ることができません。
さらに、カメラアングルが強制的に移動する場所も多いです。こういう場所でも視点変更はできますが、レバーを放すとカメラ位置が戻ってしまいます。任意の位置にカメラを固定するのは非常に困難です。
ステルス要素が重要なゲームで視点移動が不自由というのは大きな不満点でした。
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●グラフィック
グラフィックはなんとも微妙な感じです。
モデリングやテクスチャは悪くないものの、製作会社に3D表現のノウハウがないのか、安っぽいミニチュアのような画面になっています。リアルタイムレンダリングのデモもけっこうしっかり作ってあるのに、見た目がかなりしょぼいです。
ステージ構成がバラエティに富んでいてどの面も絵的な見せ場があるだけに、グラフィック技術の不足はもったいないです。
主人公のモデリングはもうちょっとがんばってほしかったです。お色気アクションなんだからこれを売りにしないといけません。
終盤でのコスチュームチェンジもガッカリでした。エロさがガタ落ちです。せめて通常衣装と切り替えられるようにしてくれれば……。
敵も主人公も死ぬときに血がドバドバ出ます。日本のゲームでここまで血が出るのはめずらしいかもしれません。海外版では敵を倒した時に首が飛んだり足が飛んだりするそうです。
敵の断末魔の足掻きもいい感じです。
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●音楽・効果音
BGMは和風な感じです。普通なのかな。
その昔子役で有名だった安達祐実が主人公の声をあてています。僕は声優のことはよくわからないんですが、まあなかなかいいんじゃないでしょうか。ただ、攻撃時の「やっ!」というかけ声が「ギャッ!」に聴こえていまいち可愛くないです。
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●操作法、システム
左アナログスティックで移動、右アナログスティックで視点移動、□で攻撃、○でジャンプ、R1でロックオン、R2で主観視点、R2でしゃがみ移動という癖のないものになっています。
△・○は特殊装備や回復アイテムなどを自由に割り当てることが出来ます。とはいえ一つはターザンアクション用のワイヤーに実質固定されるので、割り当て可能なボタンはひとつだけということになると思います。
L1でガードができるもののこれはまったく使い道がありません。
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画面右下のレーダーに敵の位置と向いている方向が表示されます。レーダーの色で敵の警戒状態がわかります「未発覚(緑)」「注意(黄)」「警戒(朱)」「発覚(赤)」となっています。
リザルトで発覚扱いとなるのはレーダーが赤くなったときのみです。
ただ、敵がレーダーの範囲から外れるとレーダーは緑色になります。視界外の敵が主人公を発見した場合(移動中に見つかりすぐに視界外に離れた場合など)レーダーが緑のままとなり発覚に気付かないことがあります。
発覚ゼロを目指すときは注意が必要です。
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未発覚の状態で近距離攻撃をすると「瞬殺」になり、敵を一撃で倒すことができます。ロックオンしていると敵の頭上に瞬殺マークが出るのでわかりやすいです。
ジャンプや落下で未発覚の敵に近づき攻撃すると「空中瞬殺」になります。空中瞬殺は判定がかなり広いので場合によっては普通に瞬殺するより役に立ちます。
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接近戦では刀、離れていると「鉄弦」攻撃になります。
ロックオンした相手に鉄弦攻撃をすると弦が巻きつきます。普通に放つと胴に巻きつきますが、放った直後にスティックの上下を入れると、頭や足に巻きつかせることができます。
この状態で走り回ると、敵と自キャラの間に張った弦で敵を切り裂くことができます。
ただ、弦が巻きつくと敵は発覚状態になります。ステルス状態で進むのが基本なのでこれを活用する場面がほとんどないのが残念です。もちろんごり押しで進むこともできるのでそういうときにはそこそこ役に立つんですが。
鉄弦を敵に巻きつかせたまま柱などを一周すると敵を縛り付けることができます。これも難度が高いわりに役に立たないのが残念。
敵の頭部目がけて鉄弦を放ち、巻きつく瞬間にもう一度攻撃ボタンを押すと、「瞬刻」という技になります。離れた場所から敵を一撃で倒すことができます。リザルトの「瞬殺」にカウントされます。
頭部への攻撃は威力が高いため、タイミングがずれた場合でも一撃で倒せることがあります。この場合、発覚→攻撃→死亡という流れなのでリザルトでは発覚扱いになり、瞬殺数も加算されません。
瞬殺は「攻撃ボタン」→「レバー上」→「攻撃ボタン」と操作が面倒くさいものの、ボスキャラを倒すには必須の技術となっています。
距離が近めの場合はレバー上を入れてから攻撃ボタン連打でもいいですが、離れているときは鉄弦が飛んだのを確認してからボタンを押さないと失敗します。
三面から「分銅」が手に入ります。分銅装備状態で瞬殺の操作を行うと、敵を引きずり倒して引っ張ることができます。
引っ張っている間は敵が「注意状態」になるものの、そのまま殺せば「発覚」にはカウントされません。敵が複数いてみんなよそ見をしているとき、分銅をすばやく首に巻きつけ暗がりに引きずり込んで一人ずつ暗殺するとなかなか雰囲気が出て面白いです。
首に巻きつけたまま走れば、引きずって移動ができます。たぐりよせるよりも速く移動できるので活用しましょう。
梁などにのぼっているときに敵の首に巻きつけ梁から降りると、首吊り状態にすることができます。この首吊りも見た目は面白いんですが普通に倒したほうが速いのでいまいち利用価値がありません。
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ロックオンの仕様が少し変です。キャラの見ている方向ではなくカメラの見ている方向の敵をロックオンします。
これは便利なところもあるものの、物陰から素早く敵に襲いかかろうとするときに非常に不便だったりします。
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サブウェポンに「吹き矢」があり、これが反則的なくらい役に立ちます。吹き矢を当てると数秒間敵が無防備状態になるため、複数の敵がいても全員に吹き矢を当ててから瞬殺していけば楽に処理できます。
僕は「吹き矢で無防備になった敵が他の敵に見つかると発覚状態になる」と勘違いしていたので、最初のプレイでは吹き矢をまったく使いませんでした。この縛りプレイはけっこう難度あがります。
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クナイもものすごく便利です。敵のそばにクナイを投げると、なんと投げたところまで敵をおびき出すことができます。クナイを当てた場所(音がした場所)ではありません。
これにより敵を楽々誘導できてしまいます。(投擲位置と着弾位置が離れすぎていたり敵が固定監視型だったりすると、誘導はできません)
あまりに便利すぎるので、僕は初プレイでは封印しました。
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地形パズルがかなり高難度です。特に大仏殿は難しい。次に移動すべき場所がわかりにくいため、とりあえず適当にジャンプして失敗というパターンが多いです。
ただ、ルートがわかってしまえばさほど難しくないので、どうしてもクリアできない人はネットで動画を探して見るとよいでしょう。
大仏殿に限らず、厳しいアクションが要求される場面では「壁張り付き移動」で簡単に切り抜けることができたりします。僕はこれに気付かず数箇所で苦戦しました。
ギリギリでジャンプとかタイミングよく針を避ける場面などが、張り付き移動で楽々越えられたりします。
地形を乗りこえるのに「壁走り」が必要な場面があり、これがけっこう難しいです。
加速した状態で壁に接触すればそのまま壁を走ってくれるんですが、重力に逆らう方向に走ると「張り付きパワー」が減っていくらしくすぐに落ちてしまいます。
壁を走って穴を越えるような場面では、壁を走り出した瞬間にレバーを下に入れないと地面と並行に走れません。壁を長距離走り続けるには波打つようにレバーを入れるのがコツです。
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死体を背負って移動し物陰に隠すことができます。しかし、死体を発見されても発覚扱いにならないのであまり意味がないような気がします。むしろ死体をわざと見つけさせたほうが倒しやすくなる場合もあります。
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ボス戦はかなり難しいです。倒し方がわからないとダメージすら与えられなかったりします。そして倒し方を見つけるのがおもしろいところだったりします。
まあどうしてもわからなかったらネットで攻略法を探してみるのもいいだろう。
終盤のボスが耐久力高すぎでした。かなり作業っぽいのでこの半分くらいでもよかった。
●ストーリー
主人公「紅」の父が作ったものすごい鉄砲を巡っての騒動です。非情な忍の世界!みたいな感じです。
終盤で「うわー! そんなー!」という場面がありました。
エンディングのムービーはプリレンダなんですが、紅がすごくブサイクです。アジア人っぽい顔立ちなのはいいんだけど、いくらなんでもあれはないだろう……という感じです。
なんでああなってしまったのか。
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●問題点
すごく気に入ったゲームなんですが、欠点も山ほどあります。
・カメラ
まず、とにかくカメラがひどい。こんなひどいカメラ仕様のゲームはそうそうないんじゃないかというひどさです。
・クナイと吹き矢が便利すぎる
吹き矢は数がさほど多くないからいいものの、クナイはなんとかしたほうがよかった気がします。当てた地点ではなく投げた地点に敵が来るので、厳重な警戒がされているところでも一人ずつおびき出して殺していけば簡単にクリアできてしまいます。
初級や中級でプレイする場合はクナイは封印したほうが楽しめるでしょう。
・説明書に特殊な操作が載っていない
ゲームを進めていくと特定ポイントで説明が出るんですが、それを見つけられないとずっと特殊操作に気付かないままです。
また、情報を読み返す機能がありません。
・発覚状態がわからないときがある
視界外の敵に姿を見られたり瞬刻のタイミングがずれたときなど、発覚しても気付かない場合があります。普通にプレイするぶんにはいいんだけど発覚ゼロを目指しているときは非常に困ります。
また、ステージクリア後にしか発覚回数が公開されないため、普通にプレイしているとなにが原因でいつ発覚したのかわかりません。僕は最初レーダー朱色状態で発覚だと思ってました。(瞬刻失敗や視界外の敵による発覚でもカウントされるため、クリア後の評価を見る限りでは「レーダー赤状態以外でも発覚扱いになる」と考えてしまった)
そのため、クナイ直撃、死体発見、吹き矢でよろめいている敵の発見、吹き矢からの復帰、も発覚だと思ってました。
まぁこの勘違いから初回は縛りプレイ状態だったためかなり楽しめたともいえます。
・クリア時の武器レベルアップが無意味
そのステージで使った武器のレベルがあがるらしいけど、まったく意味がない気がする。
・ガードが無意味
まったく使用しないガードにボタンを割り振るくらいならワイヤー専用ボタンをつけるべきだと思いました。
・ワイヤーの操作
ワイヤーでぶら下がっているとき、L2で止まらないと長さや角度調整ができません。ワイヤーアクションのテンポが非常に悪くなっています。
・使わなくてもいい仕掛け
敵を一人ずつ暗殺していったほうが圧倒的に楽になるため、まったく使わない仕掛けやルートがあります。
鍵を持った敵は必ず倒さねばならず殺害ゼロで進むことが不可能なので、敵に手を出さない隠密プレイをする気がなかなか起きないわけです。
僕は初プレイではそういう仕掛けもがんばって使いましたが、こんなことをやる人はごく小数でしょう……。
・必要ない技の数々
縛りつけとか首吊りとか、技としてはおもしろいのに使う場面が皆無に近いです。
分銅での引き倒し−引きずり−引き寄せも、使う場面がほとんどありません。僕はこの技が大好きなので無理矢理使いまくりましたが、まったく使わなくてもクリアできてしまいます。
死体発見のペナルティがないというのも分銅の価値を大きく減じてるのかもしれません。同じ操作なら瞬刻のほうが速いし。
個人的には、分銅による引きずり・引き寄せを暗殺攻撃の主力にしてもいいくらいだと思いました。
他に使わない技としては狭い通路での天井張り付きがあります。なんのための技かまったくわかりません……。一箇所使う場面があるものの、そこは普通にダッシュするだけで抜けられたりします。張り付き用の装備まであるのに使う場面がないとは。
ゲージを溜めて使える必殺技「神速」「死蝶の舞」もボス戦や対忍者以外ではまったく出番がありません。コンティニューするとゲージがなくなってしまうのも、使用機会を減らす原因のような気がしました。
・消える死体
死体が見つかっても発覚にならないうえに、時間が経つと死体が消えてしまいます。これは残念でした。
一般の人はどっちみち発覚ゼロなんて目指さないだろうから、やりこむ人のために厳しくしてほしかった。
・メニューからリトライできない
これはキツいです。スタート+セレクトでリセットできるものの、タイトル画面まで戻ってしまうためセーブポイントからの再開になります。しかもステージ開始時の長いローディングがあります。
チェックポイントからリトライするためには自殺する必要があります。しかしこのゲーム、意外に敵の攻撃頻度が緩いのでなかなか死ぬことができません。(ロックすると攻撃されやすい)
発覚ゼロを目指してプレイすると、プレイ時間の半分以上は自殺に費やしてるような感じになります。一撃死の仕掛けがあるシーンはリトライが楽で嬉しくなってしまう。
・ヒントが少ない
個人的にはこれくらい突き放してくれたほうが攻略の楽しさがあっていいです。ただ、これだけの良作が「ヒントが少なく不親切だ」ということでダメゲー扱いされてるのを見ると、もっとヒントを増やすべきだったかもと思います。いやでもやっぱりこれくらい悩ませてくれたほうが楽しいよなぁ……。難しいところだ。
・クリア後のおまけ要素がない
むしろクリアデータを保存すると再開時に不利な状態になります。
・謎のディスクロード
ポーズをかけていてもDVDドライブが作動しています。
・エンディングのムービー
エンディングの紅が別人にしか見えない。非常にアジア人っぽい顔立ちではあるが、正直言って可愛くない……。
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●プレイ記録
全難度クリア。
全項目Sランクを取るのはかなり難しいので、殺害数・発覚・瞬殺数に絞ってSを目指しました。
最終面の殺害数以外は全てS(上級)が取れました。
総プレイ時間 約64時間。
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●まとめ
悪いところをたくさん書きましたが、全体で見ればとてもよくできたアクションゲームです。かなり楽しめました。
現在は批判的な感想が目立ちますが、そのうち再評価されて品薄になるということも考えられるので、いまのうちに手に入れておくことをおすすめしますよ! いや再評価はないかな……。
これは名作です。
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紅忍(れっどにんじゃ)血河の舞
発売日 2005/03/03
開発元 トランジスタジオ