メタルギアの小島秀夫がプロデュースするSFロボットアクション! という触れ込みのアクションゲームです。
遠距離用ショット&近距離用サーベルと、ダッシュボタンを駆使して敵のロボットと高速戦闘を繰り広げるのが売りっぽいです。遠距離/近距離攻撃は自動的に切り替わります。
主人公はまったくの偶然から最新鋭ロボットに乗ることになった十四歳の少年です。なんかガンダムみたいです。人を殺したくない殺したくないといつまでもうじうじ悩んでます。
木星の傍らのスペースコロニーを舞台に、街を壊す敵のロボットを排除しつつ任務を果たしていきます。
これはすごくガッカリなゲームでした。いい部分も探せばいろいろ出てくるものの、ダメな部分がどうしようもなくダメで、いやダメというよりガッカリで、「なんでこれだけの材料を集めてこんなゴミができたんだ……」という怪作に仕上がっています。
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ロボットの戦闘シーンはなかなかかっこいいです。普通に戦っていてもアニメの一シーンみたいな感じになったりします。
しかし効果音とエフェクトが絶望的にしょぼいので全然迫力がありません。爽快感のかけらもありません。
またNORMALでプレイする限りでは敵に接近して斬り攻撃してるだけで勝ててしまいます。というよりそれ以外の行動を取ると負ける。
ダッシュで後ろに回って斬りつけたり、攻撃がヒットした瞬間バースト斬りを出すなどうまくやればかっこよく戦えるんだと思いますが、リスクばかり高くて試す価値がまるでないのです。しかもこの二種類以外の戦法は思いつかない。ボタンをたくさん使うくせに戦い方のバリエーションが少ないわけです。
このあたりは高難度でプレイすればテクニカルな操作を要求されておもしろくなるのかもしれません。しかし高難度に挑戦する気がまるで起きないつまらなさ……。
ちなみにザコは三種類くらいしかいない。
ゲーム展開もしょぼすぎです。
構造が単純で十秒で端から端までいけるようなマップが十種類くらいあり、これををいったりきたりしてフラグを立ててゲームを進めていきます。移動できるマップは前半六箇所で、後半四箇所追加という感じでしょうか。
一部迷路風のマップもありますが、探索するというほどではありません。そのため行ったりきたりの作業感が強いです。
マップ上の建造物は自機の攻撃でも敵の攻撃でも壊れます。人助けミッションの際、病院等の施設が壊されると犠牲者が出ます。
人助けミッションでは建物の破壊率と死亡者率がカウントされ、ミッション終了後戦闘の評価が下されます。
これはなかなかおもしろそうなシステムなんですが、ゲーム本編にはまったく関わってきません。戦闘結果によって機体が強化されたりペナルティを受けたりということが一切ありません。(評価が悪すぎるとバッドエンドになるらしいです)
しかもこの評価付き戦闘自体が五回くらいしかありませんでした。
街を守りながら戦うというアイデアはいいものの、敵をいちいち閑散とした地域におびき出して戦うのもかったるいです。
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マップに落ちてる「プログラム」を入手することで機体が強化されます。しかしアクションが増えたり移動性能が上がったりするわけではなく、ゲーム進行のフラグでしかないので全然嬉しくないです。
一応サブウェポンが使えるようになったりするものの、このサブウェポンも一部のボス戦等で使用する以外全然必要ありません。
アクションゲームが苦手な人への配慮なのか、戦闘を繰り返すことにより耐久力が上がったりもするようです。
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●ストーリー関連
なんの変哲もない少年が、偶然乗り込んだロボットを操り、戦いつつレジスタンスの元へ向かうというものです。普通の少年なのでロボトで戦い敵兵士を倒すことについて悩んだりもします。こういうのはキャラの心理描写をメインにできるアニメやまんがなら効果的かもしれないけど、戦闘を楽しむアクションゲームにたびたび挿入されると鬱陶しいのではあるまいか。
それなりに意味のあるキャラは、主人公、自機のAI、ライバルの三人だけです。ヒロインの空気っぷりがものすごく、終盤で重大な見せ場があるものの、結局「あれ、そうなるの?」という感じで、空気ヒロインはかくあるべしという存在感を放っています。存在感が足りなすぎて存在感があるわけですよ。この矛盾したキャラクター造型はすごいのかもしれない。
またライバル以外の敵キャラもすごい。それなりに性格づけがされてるっぽいのに顔さえ出てこない。もしかしたらオープニングあたりで出てきたかもしれないが記憶にない。ボス戦で重要キャラっぽく出てくるんですが、誰あんた?という人ばかりです。
数少ない重要人物であるライバルも、ラストシーンまで「血気盛んで戦いが好きなサディスト」くらいのことしかわかりません。ラストの独白でキャラ設定がまとめて語られます。いきなり設定押し付けられても困る。いちおう泣けるシーンなのかな。
主人公の設定も謎です。はじめてロボットをさわった普通の少年で、AIによる評価だと操縦もへたくそなはずなのに、ラストではスーパーパイロットみたいな感じになっています。主人公が成長する描写や説明がまったくないのに、ロボットの操縦を専門とする他のキャラが「おまえには勝てねえ」みたいに操縦の腕前を認めるほどです。ゲーム中の経過時間はせいぜい数日といった印象です。
ロボットの性能が高いことを考えても、戦いに人生をかけてるライバルキャラが何度も敗退するのは不自然でした。
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●グラフィック
グラフィックは今見ればしょぼいですが、PS2初期の作品ということを考えるとまぁまぁでしょう。
矩形・ミニチュア感がひしひしと伝わる背景グラフィックです。
スペースコロニーはなかなか雰囲気出ています。
ロボットのデザインはかなりかっこいいです。メタルギアソリッドでもデザインを担当している新川洋司の作らしいですよ。
ムービーでのキャラクタのモデリングはかなりガッカリです。SSやPS時代のデモムービーにあったような、つるつるのフィギュア風モデリングです。
●まとめ
クリアタイムは6:40ほどでした。僕は無駄な戦闘でもいちいち全機撃破していたので、普通にプレイすれば五時間くらいで終わるかもしれません。リトライの時間入れても八時間かからないと思います。あまりにもボリュームが薄い……。
つまらないザコ戦がなくなってボスとの連戦がはじまり、話も盛り上がり始め「1/3くらい進んだかな」と思ったところでスタッフロールですよ。これはたまげました。
ネットで感想を見ると「ストーリーが短い」と言われていますが、実際はストーリーではなくアクションシーンのボリュームがないのでしょう。
ボタン連打で勝てる戦闘や経験値を溜めてのレベルアップなどある意味RPG的なゲームなのに、狭いマップと三種類しかいないザコというリソース面での薄さのせいで残念なことになっています。
アクションシーンにもっとボリュームがあり、お使いイベントごとに数日かかる描写があれば、急成長しすぎる主人公の矛盾も解消されただろうに。
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クソゲーかというと、そうとはいえない。隠れた良作かと言われると、絶対に違う。そんな微妙な作品です。すばらしいメカデザインとおもしろそうなアイデアでゴミを作り上げた、珠玉のガッカリゲーです。
いやまあ遊んでる間はそれなりに楽しめるんだけど。
対戦モードなどもあり、これはけっこうおもしろいのかもしれません。
ボス戦がそれなりに遊べることを考えると、一対一で戦うのに向いているゲームのように感じます。
続編がなかなかの名作らしいので、そちらに期待することにしましょう。しかしよくこれだけの微妙作を作っておいて続編が出せたな……。
しかしこのボリュームの薄さは、気軽に遊びたい人には利点ともいえる。
三百円くらいで購入し土日でクリアするという感じでならけっこう楽しめると思います。
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Z.O.E Zone of Enders
発売日 2001/03/
開発元 コナミ(KCEJ)