独自の神様を奉り奇怪な因習にとらわれた山村を舞台にした推理ものです。
神隠しだとか憑きものが題材になっています。
「ホラーとミステリの融合」を謳い文句にしています。ホラー要素は雰囲気作りがメインとなっており、普通の和風推理小説としてまとまっています。
この作品でのホラー要素はオカルトスプラッタ超常現象ではなく、論理的な説明が「可能/不可能」の境目あたりを扱っています。
暗い山道をビクビクしながら歩いていく場面が事細かに描写されており、肝試し的な和風ホラーが好きな人は楽しめるんじゃないでしょうか。
僕は文章では恐怖を感じられないタイプなので正直かったるかったです。この感性の無さをなんとかしたいところです。
人間関係が非常にややこしいです。サギリという名前の登場人物が六人も出てきます。登場人物表とにらめっこして人間関係を把握しながら読み進めるのも旧家ものの醍醐味なんですが、もうちょっとなんとかしてほしかったです。
時代設定の関係か文章が硬かったり普通使わない漢字を使っていたりもするので、読むにはけっこう気合がいります。
とはいえ、章ごとの視点変更もあり話の展開はテンポがいいので、ある程度読み進めば独特の作品世界に没頭できるでしょう。
ラストのどんでんがえしは強力です。
実はラスト直前までは「まぁ普通の和風推理小説だな。雰囲気はなかなかよかったかな」と舐めてました。
手堅い展開で進み手堅い結末に落ち着いたな……と思ったところであっと驚かせてくれます。
2010 年 7 月 5 日
三津田信三「厭魅の如き憑くもの」
コメントはまだありません »
No comments yet.
RSS feed for comments on this post. TrackBack URL