再読です。
はじめて読んだときは「すごい仕掛けでビックリする」作品との評判を聞いて期待していたので、読後の感想は「なんだこんなものか」と若干がっかりしました。
読み進めるときも仕掛けばかり気にしていたのでストーリーの妙を楽しめませんでした。
推理小説読むときに仕掛けとか謎解きばかり気にして、ほんとイヤな読者だよ……。
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今回の再読ではサスペンス小説として読んでいったので、充分楽しむことができました。
ネットでの紹介では「衝撃のラスト!」が強調されがちですが、途中のサスペンス部分の魅力を強調したほうがいいんじゃないかと思います。
女を襲う猟奇殺人鬼、それを追う元刑事、殺人鬼の家族の視点が交互に切り替わり話が進んでいきます。
殺人鬼視点は他の視点より過去になっており、物語の結末ですべての時間軸と舞台が一つになるという構成です。
殺人鬼の猟奇・変態描写がしっかりしており楽しいです。しかしグロテスクなのが苦手な人にはきついかもしれない。
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トリック重視の推理ものはアレンジした作品が次々と生まれるため、アレンジ作を先に読んだ人にはオリジナルで驚けなることもあります。実際僕も仕掛けの面では期待はずれでした。
しかし本作は小説としての出来もいいので、仕掛けが色あせたとしても名作として語り継がれるでしょう。
そして笠井潔の解説の「現代日本の家庭の荒廃云々……」というのは難しく考えすぎだと思います。
全三百ページとボリュームもほどほどで、推理小説の代表作としてもちょくちょく話題に上がったりする作品なので、推理小説に興味のある方はぜひどうぞ。