今邑彩という作家は、僕の中では「誰もが知っているような大傑作には恵まれなかったけど、誰が読んでも並以上に楽しめる良作を書く人」という位置づけです。
読みやすく、娯楽小説的にも楽しめ、ラストにはしっかりとびっくりさせてくれるという作風です。
本作もその例にもれず、誰が読んでも楽しめるサスペンス小説になっています。
僕の中ではかなり評価の高い作家なんですが、残念なことに今年(2013/02)亡くなってしまいました。
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・あらすじ
ペンションを経営する女性が、かつて犯した罪のせいで脅迫されます。
宿泊客の中にいる脅迫者をなんとかして見つけ出そうという話です。
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冒頭にかなり強烈な惨殺シーンがあり、クローズドサークルものを思わせるタイトルもあって「どんなおそろしい物語がはじまるんだろうか」と身構えてしまいますが、本編は割と和気藹々と進みます。
主人公だけ、姿の見えぬ脅迫者におびえているという構図です。
とはいえかなり早い段階で元刑事が協力してくれることになります。
主人公がペンションでビクビクするパートと、元刑事があちこち飛び回って捜査するパートが交互に描写されていきます。
元刑事の捜査で宿泊客の秘密が明らかになっていくのはおもしろいものの、主人公が孤軍奮闘するサスペンス感が薄れてしまうのは残念かもしれません。
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パット・マガーの「探偵を探せ」や「七人のおば」あたりを思い出す作品です。
タイトルからも、オマージュっぽい雰囲気が漂っています。
本作を気に入った人は、パット・マガー作品を読んでみるのもいいかもしれません。