僕は筋金入りのSFファンと自認しているんですが、実はこの有名作品を二十年以上本棚の奥にしまいこんでいました。
購入したのも、前回の「2001年~」と同時期だったような。
娯楽小説としてはかなり上級者向けという感じで、初心者にはまったく勧められません。
しかし、スケールの大きな戦記ものなど、個人よりも世界全体を主人公にした作品が好きな人は気に入るかも。
国と国、文化と文化の衝突で歴史が動いていくという物語です。
以下、若干のネタバレを含んでいます。
アシモフはけっこう好きで、海外SFに興味を持った頃からいくつか読んでいました。
というか、本格的に海外SFを読むようになったのは、アシモフ原案の「電脳惑星シリーズ」からです。(このシリーズは途中で刊行が止まってしまったのが悲しい)
当時からスペースオペラはあまり興味なく、SFには「科学+ロジック」を求めていたため、アシモフはまさに理想の作風でした。
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しかし本作はあらすじを読んでもあまりおもしろそうに見えない。
銀河帝国だのファウンデーションだの、人間ではないものが主人公らしく、どう楽しめばいいのかわかりませんでした。
そして本棚の奥に眠ることになったのでした。
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今回発掘して読んでみたところ、まさに二十年前の自分が危惧したとおりの内容でした。
章ごとに主人公は用意されているものの、全体を通して語り手となるような人物がいません。
物語自体も、「ファウンデーションに危機が訪れると、自然に問題が解決するように天才科学者が仕組んだ!」という内容をなぞるだけで、いまいちおもしろさのポイントが見えてきませんでした。
危機をどうやって乗り越えるかが見もので、そこにロジックのおもしろさがあるわけですが、主人公の機転で危機を乗り越えるという印象が薄いため、問題が解決されてもスッキリ感がいまいちなのです。
実際には、それぞれの危機はそれぞれの主人公の機転で乗り切っています。しかし「それは、あらかじめそうなるように天才科学者が仕組んでいたのである!」と手柄を持っていく形になっているのです。
続編では天才科学者の予想を越える事態になったりするようで、そこからがこのシリーズの本番なのかもしれません。
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辺境から科学技術が失われていき、ファウンデーションが科学を宗教として広めていくという部分はおもしろいものの、宇宙飛行ができるのに原子力技術が失われているというのは、ちょっとピンとこなかったです。
争いのある(しかも恒星間)ところでは科学技術は栄えるのではあるまいか。
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本作単体ではあまり楽しめないのかなぁと思いました。
シリーズを続けて読んでこそ、ファウンデーションの成り上がりっぷりを楽しめるのかもしれません。
冷凍睡眠を繰り返して事の成り行きを傍観するようなキャラがいると、物語として読みやすくなりそうだけど、あえてそういう手法を取らなかったような印象も受けます。
個人の感情が物語に影響しない、文化衝突を主題にした歴史ものにしたかったのかもしれません。