宇宙船を舞台にしたホラーTPSです。
かなり強烈な残虐描写があるせいか、日本語版は発売されませんでした。
バイオハザード4を参考にしたと製作者も言っているそうで、システムが良く似ています。
他にも過去の名作のさまざまな要素を取り入れていて、レビュー等では「新鮮さはないが面白い」などと微妙な褒めかたをされています。
たしかに個々の要素を取り上げてみれば過去作の焼き直しですが、実際のプレイ感はしっかりと独自のものがあります。
このゲームの場合、文章化しにくいところに独自性があるように感じます。
「○○システム!」のように一言で表せないから、レビュアーもどこがどうすごいのか書けない。だから「過去作の焼き直しだが、細部まできちんと作ってあって面白い」みたいなレビューになるのでしょう。
ホラーとしてもシューティングとしても最高レベルの完成度で、とにかくおもしろい。
未経験の人はぜひプレイしてみてください。
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●システム
構えてから撃つタイプのTPSです。
バイオハザード4とは違い構えながら移動できるので、操作感は標準的なTPSと同じです。
敵の四肢を破壊することができ、胴体を狙って倒すよりも四肢をもぎ取っていったほうが効率的に倒せるようになっています。
細かく狙いをつけるのは難しそう……という人のために、メインの武器は幅広ショットになっており、縦長ショットと横長ショットを切り替えることができます。
敵がたくさん出たときも、膝あたりに向かって乱射すればバタバタと敵が倒れていくわけです。
入手できる弾や回復薬の数が限られているため、あまり無駄遣いはできません。そのためにも、効率よく敵を倒せる部位破壊が重要になります。
とはいえ落ちているアイテムの数はけっこう多く、自動販売機で売買もできるため、実際はそれほど気にする必要はありません。
使わない武器の弾を売っていけばお金に苦労することはないと思います。
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アイテムの所持数に制限があります。計画的に持ち物を選ばなければなりません。
余分なアイテムは自販機に預けることができます。
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武器は4つまで持ち歩くことができます。
敵を倒したときは、持っている武器の弾薬を落としやすいようになっています。
各武器はそれぞれ長所と短所があり使い勝手がかなりちがいます。
できるだけたくさん持ち歩きたいところですが、アイテム欄を圧迫するので厳選して二つくらいにするのが良さそうです。
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真空地帯やゼロG地帯があります。
真空地帯では空気の残量が切れるとゲームオーバーになってしまいます。
さらに、敵の立てる音も聞こえにくくなっているため、注意していないといきなり襲われたりもします。これは地味ながらおもしろいアイデアだと思いました。
ゼロG地帯では、磁力で壁面にブーツを貼り付けて歩くことになります。
宇宙遊泳ではないのが少々残念。
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対象物の速度をゆっくりにするステイシスという能力があります。
使用回数に制限がありますが、これを使えば無駄弾を使わずに敵を倒せます。
補給場所をおぼえておけばかなり安全にプレイできるようになります。
遠くのものを引き寄せたり、引き寄せたものを投げ飛ばしたりするキネシスという能力もあります。
ステイシス・キネシスはパズル的な謎解き要素にも使われています。
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マップはほぼ一本道(エリアを往復してイベントをこなす場面もある)で、ステージクリア型になっています。
ボタン一つで次の行き先がわかるので、悩むことはないです。
敵の無限沸きは基本的にありません。
敵は通風孔を使って移動するので、部屋に閉じこもって一息つこうとしてもいきなり襲われることがあります。これはかなり焦る。
ただ、敵によって行動範囲が決められているようで、移動できないエリアもあるようです。
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PCゲームなので当然マウス操作できますが、マウスだと妙な補正がかかって動かしづらいです。もともとコンシューマ向け(パッド向け)に作ったように思える部分があります。
あと、狭い通路だとマウスの感度が異様に低くなります。同じマウス移動量でも、通路だと角度変化が1/4くらいになる。
XBOX360パッドがあるなら、そちらを使ったほうが快適にプレイできると思います。
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●グラフィック
画面がかなり暗いです(PC版)。 僕は画面の暗さは気にしないほう(ゲーム性のひとつと考えるため)なんですが、それでも「これは無理だろ……」というくらい暗いです。
しかも、なぜかフルスクリーンモードでないと明るさ調整できません。
クリーチャーデザインはなかなか気持ち悪く、怖さを引き立てています。
遊星からの物体Xのような、人体を奇形化したようなデザインです。
主人公のデザインはかなりかっこ悪いんですが、そこが逆にかっこいい感じです。
舞台が宇宙船内ばかりなのは少々残念でした。
ただ、代わり映えのない舞台が連続するのに飽きずに楽しめるのはすごいと思いました。かなりすごい。
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●ストーリー
映画「エイリアン」の舞台で「物体X」が襲いかかってくるといった感じです。
基本的にゾンビ怪獣ものなので物語としての怖さはないな……と思ったものの、中盤から若干オカルト的な要素が入ってきてワクワクしました。
本作ならではの部分でもあるので、ここをもうちょっと強調したら怖さがさらに増したかもしれません。
日本語化MODがあるので重要な会話は日本語字幕つきで楽しめます。
ただ、画面解像度を横1280にしないと改行がめちゃくちゃになってしまいました。
びっくり演出多めです。
このゲームならびっくり演出に頼らなくてもじゅうぶん怖いのに……と思います。
まぁそのへんは、ホラーに対する考え方の違いだろう……。
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●感想
とにかく音が怖いです。
5.1chのシステムがないのなら、ヘッドフォンでプレイするべきだと思います。PCのしょぼいスピーカーとかだと面白さの四割くらいは失っているといってもいいかもしれない……。
環境音の出来がとてつもなく素晴らしく、歩いてるだけで怖いです。
遠くでカランカラン……と音がしたり、ボソボソと呟く館内放送が聞こえたり、どこからともなくきらきら星の歌が聞こえたりと、不気味さが尋常じゃありません。「効果音担当の人は普段どんな悪夢世界に住んでいるんだ……」という感じです。
あまりに怖いため、新しいエリアに進めるようになっても「怖すぎて進みたくねーよ!」という感じでした。
「おまえそこ出るんだろ! わかってんだよ!」と銃を構えながらじりじり進んでました。
ほんと怖くて困る。
射撃音、着弾音もすばらしく、「よし当たった!」という手ごたえが伝わってきます。
敵のリアクションと相まって、単発武器が普通に当たっただけでもものすごい爽快感があります。
全ての銃撃ゲームが参考にするべきヒット感ですよ。
死体等を踏み潰すこともでき、踏み付けで四肢を切断したときの効果音がこれまた気持ちいいので、死体を見つけたらとりあえず踏みつけたくなります。
酷い残虐ゲームだ!と思う人もいそうですが、そういう人もこのゲームやれば死体を見つけるなり嬉々として踏みつけにいくのではないでしょうか……。
この死体損壊はゲーム的にも若干意味があります。一部の敵が死体を怪物化させるんですが、四肢が三箇所以上欠損していると怪物化しないのです。(敵は三箇所の欠損で死ぬというシステムのため)
ただ、この怪物化させる敵があまり出てこないのは残念でした。
また、死体はすべて物理エンジンで処理されているため、蹴飛ばすとバタバタと音を立てて転がります。
これだけでもかなりびっくりするんですが、接触判定の都合で死体が背景にめり込んだりすると、すごい勢いでバタバタ暴れるので、地獄のような恐ろしさを生み出します。
バグまで使って恐怖を演出するとは、ほんと恐ろしいゲームですよ……。
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セーブポイントが多めなので慎重にプレイすればTPSが苦手でもクリアできると思います。
敵を倒すごとにセーブに戻れば回復いらずです。
武器も初期装備のプラズマカッターだけでいけます。
狙い撃つ楽しさもあり、判定も強く、連射もそこそこ利くという、目だった欠点のない優秀さです。
TPSの練習にもなるので、TPS初心者こそコイツ一丁で進むことをお勧めします。
他の武器の弾を片っ端から売っていけばお金にも余裕ができると思います。
僕も一周目はプラズマカッターのみでクリアしました。
ちなみに、二周目(Impossible)はパルスライフル、三周目(Impossible)はリッパー使用です。
貧乏性なのでパルスライフルとリッパーが好き。
セーブデータの引継ぎは難易度ごとです。
個人的には、「引き継いで高難度に挑戦」は高難度クリアの達成感が薄れてしまって萎えるので、この仕様はうれしいです。
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セーブ回数は無限、アイテム総数は有限、敵も有限、ということで、緊張しつつも安心して探索できる仕組みになっています。
個人的に、これはホラーゲームで超重要な要素だと思います。
予想外の事態で恐怖感を煽るのがホラーゲームの表の面白さなら、安全地帯を確保していったり弾薬や回復薬を上手にやりくりして有利な状況を作るのは裏の面白さだと思うのです。
もっと言えば、アクション系のホラーゲームにはさほど強い敵は必要ないとも思っています。「まともに戦うと強いけど、手間をかければ楽に倒せる」くらいの難易度設定でもじゅうぶん楽しめると思います。
「この先に進みたくない」と思わせるのがまず第一に重要で、一度死んでから工夫を凝らして再挑戦し切り抜けると、今までの怖さやストレスが「怖いけど面白かった!」になるというのが、僕の持論です。
例えば、以前プレイしたサイレントヒル3は、戦闘して進むとやたらと難しく、怖いというよりうんざりという気持ちのほうが強かったのでした。バイオハザード3(Heavy)も、弾が少ないうえに敵が大量に出て、怖さよりもきつさのほうが印象に残りました。
まぁこのへんの感覚は人によって違うだろうけど。
本作の場合は、基本的には強い敵が次々に襲い掛かってくるという構成ではあるものの、こまめにセーブに戻ったり、武器を工夫して戦ったりすれば割と楽に進めます。
そこが僕の好みにバッチリと合ったのでした。
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最高難度のimpossibleもクリアできました。
序盤は弾が足りずかなりきつかったですが、ショップが使えるようになってからはけっこうすんなりと進みました。
よく考えてみると、このゲームは回復が必要ないので、好きな武器の弾にお金をつぎ込めるのです。(こまめにセーブしてやり直せばほとんどの場所をノーダメージで進めるため、ずっと瀕死状態でもプレイできる)
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主人公の死にっぷりが話題のゲームではありますが、個人的には別にどうでもいいかな……と思いました。
これが原因で日本版が出なかったのなら、ほんともったいないです。死体損壊も別になくても良かった。
残虐ゲームではあるものの、実は生きた人間には攻撃できない仕様になっています。
クリーチャーの部位破壊なら国産ゲームでも普通にあるので、多少の規制を入れてでも日本版を出してほしかったと思います。
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ホラーゲームの歴史に名を残す傑作といっていいでしょう。
このすごい傑作が、originのサイトで1000円、セールのときなら500円で買えてしまうのです。先日は大特価で200円でしたよ……。 なんという時代だ……。
グロテスクなホラーゲームに抵抗がないのなら、ぜひやってほしい大傑作です。
開発元 | Visceral Games(EA Redwood Shores) |
発売日 | 2008/10/14 |
プレイ記録 | |
難易度 | Impossibleクリア |