有名作家ですが一冊も読んだことはなく、本作も二十年くらい積みっぱなしでした。
第二次大戦、中でも「ドレスデン爆撃」を扱った時間もののSFです。
とはいえ、SF的なおもしろさは薄く、娯楽要素も薄いです。
勇ましい戦記ものではなく、皮肉やユーモアを交え戦中戦後を傍観する、一般文学作品になっています。
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第二次大戦のさなかドイツ軍の捕虜になった男が主人公です。
彼は別次元に住む宇宙人に誘拐され、自分の人生の時間軸をランダムに移動する体質になってしまいます。
そんな彼の視点で、戦中戦後の世界を眺めていくといった内容になっています。
一応反戦的な視点ではあるのですが、押し付けがましい過激さはありません。
一兵士の立場から、起こったことを淡々と綴っています。
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実は「ドレスデン爆撃」というのは名前くらいしか知りませんでした。
調べてみたところ、東京大空襲や広島長崎の原爆投下くらいの大惨事だそうです。
英米の一般的な人たちがどう思ってるかなどの描写もあればと思いました。
思想的政治的要素を薄めるため、あえて入れなかったのかもしれない。いや、英米の読者にとっては必要ないからかも。
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一般文学作品としては名作感が漂っているものの、正直言うとSFとしては見るべきところはあまりないような気もします。
逆に第二次大戦を扱った文学作品が読みたい人なら楽しめそうです。
村上春樹とかを愛好する人が気に入りそうな印象がある。
自伝要素だけでなく、作者の旧作品の要素が盛り込まれており、集大成的な位置づけとのことです。
過去作を読んでいれば、SFとしても別の楽しみ方ができるのかも。