毎回奇想天外な大技を仕掛けてくる作家の、クローズドサークルものの推理小説です。
初期の作品に比べ、ずいぶん若者受けしそうな内容になっています。
読んでると痒くなってくるようなラブコメ感が加わっている。
正直言うとそういうのは勘弁してほしいんですが、それでこの奇才が有名になり多くの人に認められるのなら、それもいいだろう……。
表紙イラストも、「萌えラノベは卒業したぜ! これからはミステリだよミステリ」という感じの学生に受けそうな、おしゃれオタク向けっぽい感じになってます。大学を舞台にした爽やか青春ものですよ。
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「探偵助手」のシステムが機能している世界、というのがメインの仕掛けになっています。
主人公は大学で探偵助手の抗議を受けており、ゼミの合宿で事件に巻き込まれるという展開です。
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主人公の指導をする女探偵は、ぼーっとしてちょっと抜けてるところがあり、周囲の評価はいまいち。
髪の長い幽霊のような外見で、人付き合いも苦手なタイプです。
実はかなりの切れ者で、事件を未然に防いでしまうため、実績があまりありません。
社会不適合感のある隠れ美女を、主人公(読者)がサポートするという構図ですよ。
いかにもオタク好みな感じで、露骨に狙ってきている……。
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孤島ものとしてはわりとオーソドックスな展開で、トリックもそれなりですが、事件の芯の部分には世界設定が絡んでおり、相変わらず上手いなぁと思わせてくれます。
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キャラものとしての人気も出そうな出来で、奇抜な設定は抑え目で過去作品よりも読みやすいので、万人におすすめできる一冊です。
漫画化とかされてもっと人気作家になってほしいものだ。