小説をゲーム化した廃墟探険FPSです。
ステルス要素や買い物要素も入っています。
グラフィックが大変素晴らしく、荒涼とした世界観が好きな人にはたまらないものがあると思います。
しかしゲームデザインにいろいろと噛みあっていない部分が目立ち、廃墟ものに興味ない人には薦められないなぁという出来でした。
続編とのカップリングのRedux版はいろいろと調整されてるそうなので、これからプレイするならそっちのほうがいいかも。
ネットの感想を見る限りでは、Redux版はかなり評判がいいです。
グラフィックや雰囲気は魅力的でアクション面の出来もいいのですが、様々な要素が悪い形で組みあがってしまっているのでかなり好みが分かれる作品だと思います。
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●システム
基本的なFPS操作に加え、暗視ゴーグルやガスマスクといった特殊環境用の装備があります。
懐中電灯や暗視ゴーグルには電力が必要で、発電機を装備してマウスボタンを押すと充電できます。
若干めんどくさくはあるものの耐えられないほどではありません。
雰囲気作りには役立っていていいんじゃないかと思いました。
武器の中に空気圧を使用するものがあり、これも充電と同じようにチャージして使います。
屋外で活動するにはガスマスクとフィルターが必要になります。フィルターは一定時間で使えなくなるので、屋外ではあまりゆっくりと探索できません。とはいうものの、はまり防止のためかチェックポイント周辺には必ずマスクとフィルターが落ちています。
ところどころに買い物ができる街があります。お金のかわりに正規品の弾丸が流通しています。この弾丸は武器としても使えます。おもしろいアイデアなんですが、慢性金欠弾欠ゲームなのでいまいち役に立たない要素だと思いました。まぁ雰囲気作りということで……。
ゲームは完全な一本道進行で、ストーリーが進むと前のエリアには戻れません。それどころかショップに戻ることもできません。
探索しなければあっと言う間、探索すると大ボリュームというステージもあります。
スプリンターセルのような「自分がどれだけ目立っているか」の表示があります。ランプの色三種+完全消灯の四段階です。
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●グラフィック
大変素晴らしいです。
フォールアウト3のような世界観が好きな人は気に入ると思います。
手作り感あふれる武器デザインもいいです。
一方クリーチャーデザインは普通すぎておもしろくないです。
世界が崩壊してさほど時間が過ぎてないという設定のため、あまり奇抜なデザインにはできなかったのかも。
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●ストーリー
原作を重視したとのことですが、正直言って全然おもしろくありません……。
原作小説の解説サイトを見るといろいろおもしろい設定があるものの、ゲーム中ではほとんど説明されず、主人公があっちにいったりこっちにいったりするだけの話なのでした。
二種類のエンディングがあり、初回プレイでグッドエンドを見るのはたぶん無理です。
しかしバッドエンディングが正規のエンディングだそうなので、グッドエンディングは周回プレイ用のおまけっぽいです。
NPCの話を聞いたり後を着いていったりする寸劇パートが多くて長いです。
最初三十分くらいはずっと寸劇だったような……。
恐ろしいクリーチャーが襲ってくるというホラー的な要素もあるものの怖さは全然ないです。
デザインが猿とか犬の変異種っぽく、ぱっと見の恐ろしさがないせいかもしれません。
考えてみると、クリーチャーいなくても成り立つ話のような気も……。クリーチャー軍団をそのまま狂信者の集団とかに置き換えても問題なさそう。原作ではどういう扱いなのか気になるところです。
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●感想
あらかじめシステム等の情報を仕入れているかで大きく評価が分かれそうです。
僕は何も知らずにプレイしたので、きついばかりであまり楽しめませんでした。
寸劇が長いので二周目をプレイする気も起こらなかった……。
おもしろい要素はたくさん入っているものの、各要素が打ち消しあってる感じです。
例えば、
・作りこまれたグラフィック、廃墟を堪能できる探索要素&金と弾薬が少なめで探索が重要。
・ガスマスクによる探索の時間制限、前のエリアに戻れない一本道進行&強制オートセーブ。
などのように、各々は悪くないのに合わさると両方ダメになる要素が盛りだくさんでした。
強制オートセーブのせいで、探索が中断されたり武器を試したりできないのは、ほんと残念。(エリアごと戻ってやり直すことはできます)
武器はいろいろとあるものの、
・金が貴重なので買い控えてしまう。
・弾が貴重なので試し撃ち(無駄撃ち)できない。ショップのエリアには試し撃ちするための敵がいない。
・説明がないので効果がいまいちわからない。
・ショップに入る機会がかなり限定されている。(三回くらいしかないうえに一度出ると戻れない)
と、買い控え要素満載です。
戦闘マップに落ちている武器も、外れ武器を拾ったまま次のエリアに進んでしまうと取り返しがつかないので、あきらかにすごい武器以外拾えません。
ステルスを重視するプレイヤーは、サイレンサー付きの武器が手放せず武器交換できなくなったりもします。
ステルス要素も、
・一度警戒されると解除されない。
・ステルスメータ消灯状態でも、警戒中だと発砲すると同時に撃ち返される。それはもう撃つと同時に自分にも着弾というくらいの勢いで……。
・背後から襲っても頭を殴らない限り即死にならない。ヘルメットを被ってる敵はヘッドショットで即死にならない。
・音に敏感なのか、真っ暗闇で即死させてもけっこう離れた敵に見つかる。
など、00年代半ばのB級ステルスゲームみたいな理不尽さがあります。
何も知らずにプレイすると、とにかく弾の消費を抑え金も使わず窮屈なプレイになってしまいます。(そして最終的に弾が余りまくる)
ゲームの雰囲気には合っているものの、戦闘を避け探索せずに強行突破したりこのゲームならではの武器を使わなかったりと、本作のおもしろい部分を味わわずに終わりかねないのです。
また、味方が無敵の戦闘シーンもあるため、僕は戦闘を完全に味方に任せて逃げ回ってました。雰囲気重視のゲームデザインの結果、逆に雰囲気をぶち壊してしまうのでした。
ステージ間の寸劇の長さもあり、強行突破でクリアした人は「遊ぶところ少なくないか?」と思うかもしれません。
僕は殴りメインのステルスプレイだったのでけっこう時間がかかりましたが、最低難度でランボープレイしたらかなりボリューム薄く感じるのではないでしょうか。
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いろいろ考えてみると、このゲームの開発方針である「原作の展開を忠実に再現する」という部分が悪かったのではないかと思いました。
開発者は、原作を再現するために後戻りできない一本道進行を敢えて選んだのだそうです。
しかし多数の武器もショップもガスマスクも探索も、窮屈な一本道進行のせいで魅力が消されてるように見えます。
敵が無限沸きするオープンワールド型地上マップ+敵が固定されたダンジョン(ミッションステージ)という構成なら、買い物とかガスマスクとかをもっと活かせたのではないでしょうか。
一本道進行での閉塞感や緊張感自体は悪くないのですが、買い物や武器の選定すら満足にできないのはやっぱりやり過ぎだと思うのでした。
製作側は二周してくれることを期待してるのかもしれません。
ひと通り把握した後でプレイすればかなり印象がよくなりそうです。
でもまた寸劇を見せられるのはなぁ……。
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シングルFPSとしては、いろんな場面で楽しませようとする心意気に好感が持てます。
マルチのおまけでも操作できる映画でもなく「これが2010年のシングルFPSだ!」という気迫と主張が伝わってくる。
上では文句ばかり言ったものの、素晴らしい作品だと思います。
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これからプレイする人は、攻略wikiである程度概略を調べてから挑戦することをおすすめします。
僕はプレイ前に攻略サイトを見ることには否定的なんですが、本作に関してはある程度見ておいたほうが楽しめると思います。
武器、買い物ができるところ、ステルスの仕組み、くらいでいいので予習をしておこう。
かなり印象がよくなると思います。
あと小説版の設定を紹介している方のこちらのブログ記事もどうぞ。
若干のネタバレもありますが、読んだほうがストーリーを楽しめると思います。
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開発元 | 4A Games |
発売日 | 2010/05/13 |
プレイ記録 | Normalクリア |