「月の扉」で活躍した座間味くんと大迫警視を主役にした短編集です。
大迫警視が座間味くんを食事に誘い、酒を飲みつまみをつつきつつ警視がポロリと洩らした捜査情報をもとに、座間味くんが推理を披露するというものになっています。安楽椅子探偵の形式です。
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大迫警視が語る事件の大部分は捜査が終了したり決着がついたものが多いのですが、座間味くんは些細な矛盾点から関係者の心理を考察し意外な真相を導き出していきます。
大迫警視はテロリストや過激派などを対象にした部署にいることから、普通の本格推理ものではあまり扱われないような事件が出てきます。
しかし、相手が狂信的な思想を持っていたり常人とは違う価値観だったりするからこそ、その心理を分析することで予想外の論理が導き出されるわけです。ホワイダニットに重点が置かれた短編集ともいえます。
どの話にも奇妙な論理が隠されていてよくできています。
ただ、最後に収録された「月の扉」の後日譚は、せっかくの続編なのにいまいちな感じでした。
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安定感のある短編集です。本編「月の扉」もおもしろいので一緒にどうぞ。