短編集です。
多くの話で殺人事件を扱っていますが、探偵が出てきて「犯人はオマエだ!」とやるタイプではなく、「日常の謎」に近い雰囲気です。
読後感の良くない結末が多いです。いかにも女性作家的なジワ?っとくるバッドエンドです。コミカルな雰囲気の話でもほんのりと嫌な結末になったりします。
叙述トリックを用いた話や、数通の手紙から事件を推理する凝った構成の話もあります。
タイトルにもなっている「船上にて」は他の話とは雰囲気が違っていて、長編にしてもよさそうな話でした。
時代設定は1920年代で豪華客船を舞台にしたものです。事件自体はわりとしょーもない感じなのですが、旅先で仲良くなった老紳士との交流が話の軸となっています。
主人公が老紳士と仲良くなる話というのは自然と引きこまれてしまうものなのですよ! 僕の中では「老紳士もの」というジャンルです。「いい人小説」の一種です。主人公が平凡かついい人と出会う話は、感情移入度が増すのです。
話や仕掛けの傾向がさまざまなので、薄めの本ながら充分楽しめる一冊でした。