今年に入ってヴォクトが僕の中で流行っていて、いろいろ読み返しています。
今回紹介するのは1953年発表の「宇宙製造者」。
ものすごいタイトルのSF作品です。
あらすじだけを書き出すと「これぞワイドスクリーンバロック!」という感じなんですが、あちこちで論理が破綻しまくっていてわけのわからないガラクタみたいになっています。
ジャンルとしては、タイムパラドックスものでしょうか。
しかしタイムパラドックスに関してはまともな考察が行われておらず、実際の読後感は未来世界の冒険活劇といった感じです。
奇怪なアイデアを次々に投入し「わけがわからないけどすごい!」というところがこの作家の魅力ではあるものの、本作ではわけがわからなすぎてちょっと擁護できません。
彼がはまっていた怪しげな精神療法の悪影響が露骨に表れているような感じです。本書執筆時には、ダイアネティクス(今のサイエントロジー)に熱中していたのです……。
もう少し正気を保っていてくれたら傑作になっていたであろう、惜しい作品でした。