日本を代表する短編SFの名手……と思うんですが、いまひとつ知名度の上がらない作家の推理長編です。
無人島に理想郷を築こうとして失敗したカルト宗教が、20年の潜伏ののち再活動の気配を見せ、それに合わせて信者達が謎の死を遂げていくという話です。
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タイトルを見るとガチガチのロジック推理ものに思いますが、実際はところどころに論理パズル的な説明が出てくるだけで、それほど気合を入れなくても読めます。むしろハラハラドキドキの娯楽作品といった雰囲気です。
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もともと短編がメインの作家なのでとにかく展開が速いです。「えー! ここでそれを明かしちゃっていいの!?」という感じでどんどん真相が暴かれていきます。このペースで最後までもつんだろうかと読みながら心配になりました。もっともこの人の長編はみんなこんな感じなんですが。
夢中になって読めるのはいいものの、さすがに謎と真相を大放出しすぎなため結末の衝撃が薄くなっています。ラストで明かすべき驚愕の事実を中盤でポンポン出されても困る。
また、暗く重々しい展開に向いた題材を扱い、各種アイデアも強烈なものが揃っているのに、ギリギリのところで踏みとどまりネガティブな方向に進んでいかないのも残念です。
もうちょっと真相を出し惜しみして大仰に演出すれば麻耶雄嵩的な衝撃作になりそうです。もったいない。
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とてもおもしろいんだけど、「もっとおもしろくできるだろ!」と文句を言いたくなる作品でした。
短編作家としての能力の高さが本作の潜在能力を潰してしまったという印象です。